「古い人間」である筆者にとって、「音楽を聴く」と言えばすなわちそれは「コンパクト・ディスク(CD)で聴く」ことであり、「音楽=CD」と連想してしまう。筆者よりももっと上の年代にとっては、CDですらなく、もしかしたらレコードを連想するのかもしれない。筆者が音楽を聴き始めた頃というのは、レコードが店頭から姿を消していき、その座をCDに明け渡し終えた後だった。CD以外にもカセットテープやMDの登場などもあったが、アーティストの音源を購入するという意味ではやはりCDが主流だった。カセットテープやMDはあくまでCDをダビングする「入れ物」であり、あくまで「音楽を聴く」は「CDを聴く」だった。
そのような筆者としては、いまだに音楽配信によりアーティストの作品を購入することには抵抗感がある。音楽配信に何か問題があるというわけではなく、あくまで感覚の問題だ。CDショップなどでCDジャケットを眺めながら購入することが「当たり前」となっている人間にとっては、自宅のパソコンで1クリックで購入することができる音楽配信に、どうしても物足りなさを感じてしまうというだけの話だ。
しかし、時代は確実に流れつつある。14日、ロンドンに本部を置く国際レコード産業連盟は、インターネットなどを通じた音楽配信の世界の売上高が2014年に初めてCDなどの音楽ソフトを上回ったとの発表を行った。国際レコード産業連盟によれば、14年のインターネットなどを通じた音楽配信の売上高は前年比6.9%アップの68億5000万ドル(約8180億円)であり、データ受信を行いながら再生することができる「ストリーミング」や、一定料金を支払えば、一定期間好きな音楽が聴き放題となる「サブスクリプション」といったサービスが伸長しているとのこと。
こうした音楽配信の伸長に対して、14年のCDなどの音楽ソフト全体の売上高は前年比0.4%ダウンの149億7000万ドルであった。ただし日本でのシェアは音楽配信よりもCDの方が高く、全体の78%を占めているという。(編集担当:滝川幸平)