それでも“三菱自は潰れない?” 国内販売で輸入車以下でも生き残れる理由(わけ)?

2021年01月31日 10:16

Outlander Phev Exterior

苦境が続く三菱自、国内ではピュア電動車の生産からも撤退、頼みの綱はPHEV 写真はアウトランダーPHEV

 三菱自動車は2021年3月期の連結決算予想を2020年11月に公開した。その資料によると売上高は前期比35%減の1兆4800億円、営業損益は1400億円の赤字(前期は127億円の黒字)、純利益は3600億円の赤字(前期258億円の赤字)の見込み。世界販売は38%減の83万8000台だ。

 決算予想を発表したその日、三菱自は往年の稼ぎ頭であった四駆・パジェロの完成車工場で、子会社の「パジェロ製造株式会社」の閉鎖も発表した。

 さらにコロナ禍の影響で、国内販売(登録車)は自販連によると2020年1?12月期で2万7545台、前年同期比58.7%。軽自動車は4万2736台、前年同期比75.6%(全軽自協)だ。同期の輸入乗用車販売が29.7万台で、登録車国内販売は輸入車の10分の1という状況。かつて国内自動車“三強”の一角を占めていたメーカーとは思えない数字だ。

 それでも三菱自動車は潰れない、その“わけ”は確かにありそうだ。2000年のリコール隠しや、その後の不正燃費発表など不祥事を繰り返した三菱自だが、そのたびに大財閥・三菱グループの支援を受けて乗り越えてきた。

 日本を代表するコングロマリットのひとつ、三菱財閥の経済力は強力だ。東京商工リサーチの調査によると、2020年三菱グループと取引のある国内企業を含めた売上高の総額は、グループ29社の仕入れ先企業、販売先企業、関連出資先企業の重複を除いて、280兆円。関係する従業員総数は約450万人に達するという。かつて1990年代前半ほどまで、そこで働く関係者は、三菱ブランドを使うことが必然だった。三菱の一員であるというプライドの証明である。いまでこそ、そんな慣習は薄れたとされるが、過去三菱自の売上は、強大な消費者集団でもある彼らが支えてきたという側面が少なからずあったようだ。組織の三菱の真骨頂である。

 三菱財閥の結束力は三井や住友に較べて強いと言われる。三菱グループ29社の社長・会長で組織する中核機関として「金曜会」と呼ぶ会議があり、グループ企業に大きな不祥事あった場合、御三家といわれる三菱重工業、三菱商事、東京三菱銀行の金曜会・代表幹事の指令で事務局が広報指導に入るとされ、こうした暗黙の掟を「不文律的強制力」と表現する。「組織の三菱」といわれる所以がそこにあるのだ。

 現在、三菱自は日産自動車から34%の出資を受け、傘下に収まって再建を目指している。その再建途上、日産でゴーン事件が勃発、そしてコロナ禍だ。

 三菱自は今回の決算予想発表において業績回復に向け、経営資源を東南アジア事業に集中する方針を示した。国内では、先に述べた不祥事で三菱自のイメージダウンとユーザー離れが目立つ。しかし、東南アジアで三菱自の評判はよく、販売も好調だという。

 三菱自によれば2019年の海外への輸出実績は37万5512台で、海外販売が好調だ。また、海外生産台数は74万9000台以上で、その拠点の多くが東南アジアに集中しており、三菱自の生産拠点が数多くあり、エリアにおける販売も好調でシェアも大きい。

 また、1997年から三菱自の中国合弁法人・瀋陽航天三菱がエンジンの生産を開始。拡大を続ける中国の自動車市場で、多くの中国メーカーにエンジンを供給、2017年に500万基を達成したという。その後も三菱自は、中国市場でエンジン生産のライセンス供与や技術指導で収益をあげている。このように国内では散々なMITSUBISHI MOTORだが、東南アジアを中心に稼いでいる。

 いっぽう、国内における三菱自の経営および従業員の雇用確保は、「NMKV」という組織に掛かっている。NMKVは2011年6月。日産自動車と三菱自動車が折半(資本金1000万円の50%をそれぞれ負担)してつくった組織だ。

 設立の目的はNMKVがイニシアティブを取って、日産と三菱が持っているクルマ作りのノウハウを融合し、新しい軽自動車を企画開発して市場に送り出すことにある。

 つまり、従来の三菱自からの単なるOEM供給による軽自動車ラインアップでは、日産ユーザー(ディーラー)を満足させることができなかった。だから、「商品企画から日産が口を出す(出せる)組織を作った」ということだ。

 NMKVは企画会社で、生産設備などはない。日産としては、工場の建設などで独自に軽自動車生産に乗り出すよりも、三菱の余剰設備を使える。三菱としては、2000年の「リコール隠匿事件」以降の危機的状況を乗り切るために日産の支援は必須項目といえる。NMKVによる軽自動車の企画で、軽自動車生産設備である三菱自の水島工場をフル稼働できることが大きなメリットなる。

 三菱自は今後、商事、銀行など三菱グループ大御所の支援も受けながら、海外生産・販売に軸足を置いて外貨を稼ぎ、国内向けには日産自動車の傘下としてNMKVの企画力を活かした軽自動車生産で設備・従業員稼働率を高め、地道に企業運営を行なっていくとしているが、売上規模縮小のなか膨大な赤字からの脱却は、遙か遠い道程となりそうだ。(編集担当:吉田恒)