リーマン・ショック発生後、新工場の建設を凍結し既存の工場の生産性向上に努めてきていたトヨタ自動車<7203>だが、15日、約1700億円を投じて中国とメキシコに新工場を建設させるとの発表を行った。2013年4月に新設を凍結させて以来、初となる。
トヨタ自動車によれば、メキシコのグアナフアト州に新工場を建設し、19年の稼働開始を目指すという。こちらの工場ではアメリカ市場向けに乗用車の「カローラ」が生産される。生産能力は年間20万台で、投資額は約1200億円となっている。工場新設に伴い、約2000人を新規雇用する。また今年発売の新型車より採用する車台や部品の共通化戦略「TNGA」に基づいた車づくりのモデル工場となる。
また中国では広州市に新工場を建設し、17年中の稼働を目指す。こちらでは新型の小型車が生産され、生産能力は年間10万台となっているが、需要に応じて拡大も検討するとしている。14年、中国におけるトヨタ自動車の新車販売数は初めて100万台を突破した。今後も需要は伸びるとの見通しから、ラインを増設することで需要の高まりに対応したい考えだ。投資額は約525億円となっている。
トヨタ自動車は、08年に発生したリーマン・ショック後、それまでの拡大路線が裏目に出て大幅な赤字に陥った経緯から、新工場の建設を凍結し、既存の工場の生産性向上や、低コストで需要変動に強い生産ラインの開発に努めてきた。しかし今回、工場を新設する際の初期投資を、08年と比較して4割減らすめどがつくなど、これまでの改革が一定の成果を挙げたことを受けて、とうとう凍結を解除して生産力の増強に乗り出した。
メキシコ・グアナフアト州と中国・広州市の2つの工場が完成し稼働開始となれば、トヨタ自動車の生産能力はメキシコで3.2倍、中国でも約10%アップすることとなる。今回、新工場の建設凍結を解除したトヨタ自動車は、さらに中国の天津市での新工場建設を検討するとしており、今後ますます生産能力の増強に努める姿勢を示している。(編集担当:滝川幸平)