4月19日、MotoGP第3戦アルゼンチンGP決勝が行われた。決勝の舞台となったのはテルマス・デ・リオ・オンド。全長4,806mのこのサーキットはコース幅が広く、抜きどころも多い人気のサーキットだが、タイヤマネジメントが非常に難しいとされている。
年間を通してレース開催数が少ないためライン以外は非常にスリッピーな上、路面温度も高い。また、高速左コーナーではタイヤへの負担が非常に大きいため、タイヤの選び方と使い方がレースの結果を大きく左右する。
気温29℃・路面温度36℃というコンディションで迎えた決勝、絶好のスタートを切ってホールショットを決めたのは、2番グリッドからスタートしたアレイシ・エスパルガロだった。
だが、すぐにポールポジションからスタートしたM・マルケスがA・エスパルガロを抜き返してトップを奪取。そのままじわじわと後続車を引き離し始め、4周目には2番手のC・クラッチローに対して2.5秒のアドバンテージを築いた。
その一方で、レース序盤の2番手争いは激化。A・エスパルガロ、ホルヘ・ロレンソ(モビスターヤマハMotoGP)、カル・クラッチロー(CWM LCRホンダ)、アンドレア・ドビツィオーゾ(ドゥカティ)、アンドレア・イアンノーネ(ドゥカティ)などが入り乱れる展開となった。
3列目、8番グリッドからスタートしたバレンティーノ・ロッシ(モビスターヤマハMotoGP)は、順当なスタートを決め、徐々に順位を上げ、6周目にはチームメイトのJ・ロレンソを抜いて5番手まで浮上。10周目にはC・クラッチローをかわし、さらに11周目にはA・ドビツィオーゾを抜いて単独2番手の位置につけた。
また、唯一の南米出身ライダーであるヨニー・エルナンデス(プラマックレーシング)は7周目にマシンがトラブルで炎上し、リタイアを喫している。
中盤はM・マルケスが2番手以降に圧倒的な差をつけてレースを引っ張ったが、後半に入ると徐々にM・マルケスのペースが落ち始める。これに対してV・ロッシは中盤からペースを上げて先を行くM・マルケスを猛追。一気に差を縮めて22周目にはM・マルケスを完全に射程圏内に捉えた。
前半、後続を引き離して圧倒的なアドバンテージを築いたかのように見えたM・マルケスだが、後半はタイヤを消耗し一気にペースを落とした。一方、追い上げたV・ロッシはリアタイヤに最も硬いタイヤ(エキストラハード)を選択。レースディスタンスを見据えたタイヤチョイスとマネジメントが功を奏し、後半ペースを上げてM・マルケスを追いつめていった。
この攻防戦が衝撃の展開を迎えたのはレース残り2周、24周目。先頭を守り抜きたいM・マルケスの隙を伺って攻めたV・ロッシは軽く接触しながらもなんとかトップに立った。だが、続くコーナーでM・マルケスとV・ロッシのマシンが接触し、M・マルケスは激しく転倒。残りわずかというところで、リタイアを余儀なくされてしまった。
レース終盤のまさかの展開に観客も騒然となり、この接触については審議も行われたが、通常のレースアクシデントとして処理された。
レースはギリギリの攻防を制したV・ロッシが開幕戦に続き、今季2度目の優勝。開幕戦から1位・3位・1位と3戦連続の表彰台を獲得し絶好調だ。A・ドビツィオーゾは3戦連続の2位とこちらも好調をキープしている。
また、最後の最後までもつれ込んだ3番手争いだったが、C・クラッチローが最終ラップの最終コーナーでA・イアンノーネをかわして3位でフィニッシュ。今季初の表彰台を獲得した。
A・イアンノーネは4位で惜しくも表彰台を逃し、J・ロレンソは5位でレースを終えた。また、2番グリッドからスタートしたA・エスパルガロは7位。スズキとしては今季ベストのポジションでゴールしている。
昨季は開幕から10連勝、アルゼンチンGPでも2位以下に大きく水を開けて優勝したM・マルケスだが、今季は昨季ほどの圧倒的な強さは感じられない。また、チームメイトのダニ・ペドロサ(レプソルホンダ)は手術のため欠場。代役として参戦した青山博一は最終ラップで転倒しリタイアしており、レプソルホンダ勢は残念な結果に終わっている。
そんなM・マルケスとは対照的に、圧倒的な勝負強さを見せているのがV・ロッシ。今季2勝目を決めてチャンピオンシップからは頭一つ抜け出した形だ。
次戦スペインGP決勝は5月3日、スペイン南部アンダルシア地方へレスサーキットで行われる。M・マルケスやJ・ロレンソなど、スペイン人ライダーにとっては母国GPとなるだけに、彼らに対する期待も大きい。
昨季と打って変わり今季は戦績がいまいち奮わないスペイン人ライダーの巻き返しがあるのか、それともV・ロッシやA・ドビツィオーゾといったイタリア勢が今の勢いをさらに強めるのか、あるいは新たなライダーが台頭してくるのか……いずれにしてもスペインGPは今後の展開を占う上では見逃せないレースとなることは間違いない。(編集担当:熊谷けい)