MotoGP2015年シーズンもいよいよ開幕し、29日開幕戦となるカタールGPの決勝が行われた。開幕戦の舞台となったのはロサイル・インターナショナル・サーキット。複数の中高速コーナーに加えヘアピンも配置され、マシンの旋回性が重要とされるコースだ。さらに、1,068mという長いストレートも有しており、砂漠の中にあるため路面もスリッピーで、マシンのバランスとライダーの技量、双方が問われる。
また、カタールGPはナイトレースのため、気温・路面温度が徐々に下がり、人工照明の中レースが行われる。イレギュラーなコンディションで行われるレースのため、展開も予想しにくく、マシンにとってもライダーにとっても過酷なサーキットの一つだ。
そんなロサイル・インターナショナル・サーキットで行われた開幕戦・決勝。最も注目されたのは予選で一番時計を出したアンドレア・ドビツィオーゾ(ドゥカティ)だった。近年、MotoGPではいまいち戦績の振るわなかったドゥカティだが、未勝利ファクトリーチームに与えられるアドバンテージもあり、昨シーズン後半から調子を上げてきていた。
昨シーズン絶好調だったレプソルホンダのマルク・マルケス(3番手)、ダニ・ペドロさ(2番手)を押さえてのA・ドビツィオーゾのポールポジションは予想外であり、昨シーズンとは大きく異なる展開にファンの期待も高まった。
決勝は気温22℃、路面温度28℃のドライコンディションでスタートした決勝。絶好のスタートを決め、ホールショットを決めたのはポールポジションを獲得したA・ドビツィオーゾだった。
これとは対照的の大きくポジションを落としたのが、予選で1列目・3番手につけていたM・マルケス。スタート直後の1コーナーで大きくコースアウトしたM・マルケスは一時最後方まで順位を落とし、そこからの追い上げを余儀なくされた。
スタート直後はコースアウトなどの混乱もあり、順位が目まぐるしく変わる混戦となったが、3周目目には予選6番手のホルヘ・ロレンソ(モビスターヤマハMotoGP)がトップに立った。それにA・ドビツィオーゾとアンドレア・イアンノーネ(ドゥカティ)が続き、4周目にはこの3台が集団から抜け出してレースを引っ張る形となった。
その後、7周目には予選8番手のバレンティーノ・ロッシ(モビスターヤマハMotoGP)先頭集団に追いつき、ドゥカティとモビスターヤマハMotoGPの4台が順位を目まぐるしく変えるデッドヒートを繰り広げた。
状況が大きく変わったのは、レース終盤の19周目。3番手のV・ロッシがペースのなかなか上がらないチームメイトのJ・ロレンソをパスして2番手に浮上。トップに立っていたA・ドビツィオーゾに迫る。また4番手を走行していたA・イアンノーネもJ・ロレンソをパスして3番手に浮上した。
残り3周、A・ドビツィオーゾとV・ロッシのトップ争いは激化し、ロサイル・インターナショナル・サーキットの特徴である長いストレートではA・ドビツィオーゾが速さを見せ前に立つものの、インフィールド区間ではV・ロッシが巧みなコーナリングで巻き返すといった、抜きつ抜かれつのデットヒートとなった。
残り2周、21週目の終盤でA・ドビツィオーゾを抜いてトップに立ったV・ロッシは、巧みなコーナリングでアグレッシブに攻めるA・ドビツィオーゾを凌ぎきり、開幕戦優勝を決めた。
V・ロッシの優勝は昨年10月の第16戦オーストラリアGP以来、最高峰クラス83勝目。開幕戦での優勝は2010年以来5年ぶりのことだ。
最後までV・ロッシとデッドヒートを演じたA・ドビツィオーゾは0.174秒差の僅差の2位。3位にはA・イアンノーネ、4位にはJ・ロレンソが入った。
モビスターヤマハは予選ではタイムが伸びなかったものの、決勝のロングディスタンスでは1位・4位という見事な結果を残しており、昨シーズン後半から調子は右肩上がりだ。
一方、ミスで一旦最後方まで順位を落としていた昨年の覇者M・マルケスは、その後猛烈な追い上げを見せ、12周目にはチームメイトのD・ペドロサをパス。最終的には5番手まで順位を上げたものの、先頭集団に追いつくことはできなかった。
2015年MotoGP開幕戦は、昨シーズン絶好調だったレプソルホンダが5位、6位とに終わり、昨シーズンはあまり奮わなかったドゥカティが大躍進するといった波乱含みの結果は正直驚きだ。
さらに、この開幕戦ではイタリア人ライダーが表彰台を独占。Moto2、Moto3クラスでもスペイン人ライダーが表彰台を逃すというここ数年見られなかった波乱が起きている。
次戦はサーキット・オブ・ジ・アメリカズで行われるアメリカGP。開幕戦を見る限り、今シーズンは昨年とは全く違う様相となりそうなだけに楽しみは尽きない。
モビスターヤマハがこのまま好調を維持して引っ張っていくのか、それともこのコースを得意とするM・マルケスが巻き返しを見せるのか、さらに名門ドゥカティの復活となるか――いずれにしても今シーズンの行方を占うレースになることは間違いないだろう。(編集担当:熊谷けい)