東芝、太陽光で水素を製造・貯蔵する自立型エネルギー供給システム「H2One」稼働スタート

2015年04月23日 08:44

Toshiba H2One

東芝は、太陽光発電で水を電気分解し水素を発生・貯蔵し、燃料電池で再発電する国内初のシステム「H2One(エイチツーワン)」を川崎マリエンで稼働させた

 東芝は、太陽光発電でつくった電気で水を電気分解し水素を発生・貯蔵し、電気が必要になった場合に燃料電池で再発電する国内初のシステム「H2One(エイチツーワン)」を川崎市臨海部公共施設「川崎市港湾振興会館および東扇島中公園」(川崎マリエン)で稼働させた。災害時などに、発電した電気と燃料電池が発電時に発生する熱で湧かしたお湯を供給する。蓄電池などを使って電気を貯める方法に比べ、3分の2程度のコストで大量の電気を効率よく保存できるという。

 システム一式は長さ約6メートルのコンテナ3基と長さ2メートルのコンテナ1基で構成され、災害が起きた場合に、トレーラーなどで運搬し電源が必要な被災地などで発電することもできる。この自立型エネルギー供給システム「H2One」は、この実証実験を経て、今年9月を目途に自治体や企業向けにシステム販売をスタート、輸出も検討するという。年50台の受注を目指す。

 「H2One」は太陽光発電設備、蓄電池、水素を製造する水電気分解装置、水素貯蔵タンク、燃料電池などを組み合わせた自立型のエネルギー供給システム。太陽光発電設備で発電した電気を用い、水を電気分解することで発生させた水素をタンクに貯蔵し、電気と温水を供給する燃料電池の燃料として活用するシステムだ。水と太陽光のみで稼働できるため、災害時にライフラインが寸断された場合においても、自立して電気と温水を供給できる。川崎マリエンは、周辺地域ビジネス街における帰宅困難者の一時滞在施設に指定されている。災害時には、貯蔵した水素を使って300名に約1週間分の電気と温水を供給する。

 平常時には、水素の製造量、蓄電量、発電量などを最適に制御する水素エネルギーマネジメントシステム(水素EMS)により、電力のピークシフトおよびピークカットに貢献する装置として使う。

 東芝と川崎市は、2013年11月13日に「再生可能エネルギーと水素を使った自立型エネルギー供給システムの共同実証」に合意し協定を締結していた。川崎市が実証試験の環境を提供し、東芝が設備の設計、建設、保守を担当するというものだ。その成果は川崎市と東芝で活用する。

 今回の「H2One」稼働をうけて、川崎市は水素エネルギーの積極的な導入と活用による「未来型環境・産業都市」の実現に向け、これからも関係企業など多様な主体と連携・協力しながら取り組みを進める。東芝もグループ内の幅広い事業領域における技術を融合しながら、CO2を排出しない水素による安心で安全、そして快適なスマートコミュニティの実現を目指すという。

 太陽光発電の出力は25kW、蓄電池と燃料電池の合計出力は30kW、水素貯蔵量は275Nm3、水素電力貯蔵量は350kWh、温水供給量は60リットル/h。

 蓄電池は、太陽光発電が出力しない時間帯の電力を補うために使う。これは寿命や急速充電を特徴とする東芝製のリチウムイオン蓄電池(SCiB)である。燃料電池は、同社の天然ガスを燃料に使った燃料電池コージェネレーションシステム「エネファーム」をベースに純水素を燃料にした燃料電池システムとした。(編集担当:吉田恒)