【今週の展望】月末で日銀会合がある4月30日は要注意日

2015年04月26日 20:34

 最大の追い風と目されたのが預金準備率を1%引き下げた中国の追加金融緩和だったが、海外では前々週に高まったギリシャの債務不安の後退、原油先物市場の1バレル57ドルまでの回復、国内では好決算を先取りした業績観測報道、30日の日銀会合での追加緩和期待が株価の上値追いを助けた。特に日銀の追加緩和期待はTOPIX寄与度が大きいメガバンクなど金融セクターの買いを誘ったので、TOPIXは7年5ヵ月ぶりに1600台に乗り、それに定着している。

 21、22日は日経平均寄与度が大きい主力銘柄だけでなく、中・小型銘柄にもまんべんなく買いが入った。10日の2万円タッチが日経平均先物の指数プレイによる「つくられた2万円」で数分間しかもたなかったのに対し、前週後半の2万円台定着は、基礎体力がついた東京市場全体の押し上げで日経平均も〃ナチュラルに〃2万円台に乗って、それを「通過点」としてさらに20200円台まで伸びた感があった。だからこそ利益確定売りが入って値下がり銘柄数のほうが多かった23日、24日も、2万円を割らなかったのだろう。

 だからと言って、今週も2万円台に定着し上値追いで20300円台、20400円台をうかがう状況になると楽観的に考えるわけにはいかない。3月31日の日経平均終値19206円に対する月間騰落が一時1000円高をオーバーした4月も月末を迎え、大型連休前でもあり利益確定の動きが予想される。ドレッシング買いのお化粧の必要はなさそう。投資家の資金が分散する恐れがある新規IPOも5件あり、中には吸収金額が100億円を超える〃大型案件〃もある。28日の日米首脳会談、28~29日のFOMC、30日の日銀会合、5月1日朝の国内マクロ経済指標の発表ラッシュと、波乱要因になりかねないイベントが続く。

 もし、日米首脳会談でTPP交渉合意への道筋がつけられず、FOMCで6月の利上げもあるかのような話が出て、日銀会合の結果は一部の期待に反し金融政策現状維持。さらに1日のマクロ経済指標も足踏み傾向だとしたら、日経平均は2万円台を維持できるだろうか? 日程を見ると4月30日は、29日の祝日休場をはさんで前場に日米首脳会談とFOMCの結果と、それへのNY市場の為替、株価の反応を織り込み、さらに後場には日銀会合の結果も織り込む。今週、最も要注意な日で、最も危険な日になる可能性もある。

 危険な日になるとすると、その日、最も危険なセクターは、前週の2万円乗せの主役だった金融や証券の「日銀会合失望売り」だろう。黒田総裁は23日午後に国会で「サプライズで効果を出すと考えていない」と発言したが、それでも勝手に期待してその結果に勝手に失望して株価が下がるというシナリオである。23日は黒田発言後にマイナスまで下げる場面があり、まるで30日のリハーサルのようだった。この日銀会合失望売りに為替の円高、「TPP失望売り」、早期利上げ懸念によるNY市場の株安などの悪材料が重なったら今週、19000円台前半までの大幅な押し返しも、ないとは言えないだろう。

 逆に、30日にもし万一、首相訪米中でもお構いなく日銀の追加金融緩和が飛び出したら、期待の声が相次いでいた「突然ではない贈り物」でも、昨年10月31日と同じように円安とあいまって日経平均が20500円ぐらいまで一気に棒上げし、2000年4月の高値20833円に接近する可能性まで考えられることだろう。

 その中間のシナリオとして、「もってる安倍首相」がTPPの日米交渉で結果を出し、FOMCでは早期利上げ観測が後退し、日銀会合は金融政策現状維持、マクロ経済指標は全体的に悪くなく、企業決算はおおむね好調でドル円は前週末並みの119円台後半~120円台だとすると、30日に金融関連銘柄中心に売られて日経平均が下落するとしても、その下落分は早いうちに回復できるとみる。それでも上値は抑えられて、前週並みにとどまりそうだ。

 そのように不確定要素が多い今週だが、24日終値20020.04円のテクニカルポジションを確認しておくと、移動平均線は5日線が19977円、25日線が19686円、75日線が18639円、200日線が17072円で、全て下にある。日足一目均衡表の「雲」は18079~18893円にあり、今週は雲の上限が19000円台にわき上がり、5月1日には19238円に達する。雲が75日線を包み込み、けっこう接近してきた。ボリンジャーバンドでは25日線+1σの19978円と+2σの20271円の間にある。

 25日移動平均乖離率は+1.69%、25日騰落レシオは97.11で、ともに買われすぎラインは遠いが、RSI(相対力指数)は69.4で、もう少しで買われすぎラインに達する。ストキャスティクスは86.20で買われすぎラインの75を超えている。RCI(順位相関指数)は36.4、サイコロジカルラインは50.0でほぼニュートラル。

 それでもテクニカル的には上値追いの余裕はあまりなく、25日線+2σの20271円付近が限界になりそうだ。前週の週間高値も23日の20252円で、序盤につけた後に利益確定売りが入り20200円台は長続きしなかった。一方、下値は24日こそ「まぼろしのSQ」の20008円、心理的節目の2万円、5日移動平均の19977円がトリプルでサポートラインの役割を果たしたが、今週は月末の利益確定売りやイベントがらみの波乱も予想されるので2万円を割り込む日もあり、下げ止まるポイントは25日移動平均の19686円付近ではないかと思われる。

 ということで、中間シナリオを採用して今週の日経平均終値の変動レンジは19700~20250円とみる。東京市場の現状は決して、ちょうど良い湯加減の「ゴルディロックス」などではない。下手をすると日米首脳会談、FOMC、日銀会合の「3匹のクマ」が一斉に悪材料のキバをむいてくるかもしれない。状況が悪そうなら、リスクにあえて立ち向かわず、身を低くしてやり過ごすのも大事なこと。「人生には無数の罠が待ち受けていて、わたしたちのほとんどがその多くにはまってしまう。しかし理想的なのは、そうした数多くの罠に、可能な限り近づかないようにするということだ」(チャールズ・ブコウスキー『死をポケットに入れて』)(編集担当:寺尾淳)