【証券業界の2015年3月期決算】株式の売買手数料の低迷をそれ以外の収益源でカバーしきれず、減収減益決算が続出

2015年05月06日 10:57

 5月1日、証券業界の2015年3月期本決算が出揃った。全般的には、その前の期はアベノミクス相場の恩恵で大幅増収増益、増配が相次いだが、2014年1月の10%から20%への投資増税によってそれが途切れた格好で、株式の売買手数料は減収を余儀なくされ、それ以外の投資信託の販売、新規上場にからんだ引受・売出、M&A仲介、自己売買などの収益ではカバーしきれなかった。

 それでも、預かり資産の運用で収益をあげるアセットマネジメント部門に力を入れる総合証券の野村HDは増収、最終増益の好決算を残している。一方、個人向けの株式や投信の売買手数料に頼るイメージがあるネット証券会社でも、売買の低迷に泣いた松井証券、マネックスGに対しカブドットコム証券は当期純利益が9年ぶりの高水準で過去最高になるなど、明暗が分かれた。

 なお、マーケットの動向に大きく左右される2016年3月期の今期見通しは、証券業界の慣例で各社とも非公表となっている。

 ■総合証券もネット証券も決算で明暗が分かれた

 2015年3月期の実績は、野村HD<8604>は収益合計5.4%増、収益合計(金融費用控除後)3.0%増、税引前当期純利益4.1%減、最終当期純利益5.2%増の増収、最終増益。最終利益は2006年3月期以来の高水準。年間配当は前期比2円増の19円だった。証券業界全体が売買手数料の低迷に苦しむ中、同社の業績を支える柱になったのはアセットマネジメント部門で増収増益。NISAの開始などに伴う継続的な資金流入で運用資産残高は過去最高だった。永井浩二CEOは「顧客資産残高が109.5兆円になり、ストック収入が2016年3月期の目標を1年前倒しで達成するなど、ビジネスモデル変革の取り組みが着実に進みつつある」とコメントしている。投資銀行業務など法人向けホールセール部門は、リクルートHD<6098>など大型新規IPO案件を手がけて収益性が改善した。

 大和証券G<8601>は営業収益2.6%増、営業利益1.8%減、経常利益6.3%減、当期純利益12.4%減と、前期の大幅増収、過去最高益から一転、わずかな増収と減益という内容。年間配当は前期比4円減の30円だった。個人向けリテール部門の株式、投資信託の売買手数料収入が減少したが、アセットマネジメント部門の経常利益は過去最高だった。M&Aが活発化し法人向けのホールセール部門も堅調に推移した。

 カブドットコム証券<8703>は営業収益は過去最高ながら0.1%の微増、純営業収益は1.5%減、営業利益は12.6%減、経常利益は12.7%減だったが、約15億円の株式売却益を計上して当期純利益15.2%増という最終増益。年間配当は記念配8円を含めて前期比5円増の23円だった。前期は活発だった個人の株式売買は23%も減少し、手数料収入は14%減。それでもFX、投資信託、信用取引の金利収入などの金融収支が下支えし、最終利益は過去最高だった。

 松井証券<8628>は営業収益14.0%減、純営業収益15.1%減、営業利益18.5%減、経常利益18.3%減、当期純利益4.5%減。売買委託手数料収入は約24%減で、大幅増収増益の前期とは一変して減収減益決算になった。年間配当は前期比10円減の40円。

 マネックスG<8698>は営業収益6.8%減、税引前利益63.8%減、当期利益66.3%減、最終当期純利益66.3%減と、その前の期の大幅増収増益が一転して減収減益決算。年間配当は前期の実質18円から9.8円減の8.2円だった。その要因は株式委託手数料収入の低迷で、アメリカ事業もFXや先物・オプションの収入が伸び悩んだ。