開催が迫る「TECHNO-FRONTIER 2015」(5月20~22日・幕張メッセ)。今年の注目技術は採用が急速に進むパワー半導体だ。今年4月にフル SiC パワーモジュールのラインアップを拡充したローム曰く「SiCパワー半導体は、もはや次世代デバイスではなく普及する段階」。どんな具体例を見せてくれるのか期待が高まる。
今年も恒例の「TECHNO-FRONTIER 2015」(テクノフロンティア)が、2015年5月20~22日の3日間、千葉県の幕張メッセで開催される(注:昨年は東京ビッグサイトで開催された)。
テクノフロンティアは、一般社団法人日本能率協会主催による、メカトロニクス・エレクトロニクス関連の最新の要素技術が一堂に集結する展示会で、約500もの企業・団体が出展するスケールの大きさと、最新の技術動向が学べる技術シンポジウムが同時開催されることが特長だ。研究開発や設計、生産、製造に関わるエンジニアから絶大な支持を得ており、毎年全国から約3万人が来場するビッグイベントとして知られている。
今年は、これまでの東京ビッグサイトから幕張メッセに会場を移して開催されるが、縮小どころか、新規出展企業が約120社という盛況ぶり。しかも100社以上が、同イベントで本邦初公開の製品展示を予定しているというから、このイベントがメカトロニクス・エレクトロニクス関連企業にとって、いかに重要な位置づけをされているのかがよく分かる。
モノのインターネット「IoT」や、ワイヤレス給電やUSB経由の給電など最新の電力供給技術、産業用途を主としたモータやモータドライブ、医療、介護、生活支援などへの導入が進むロボティクス技術など、ありとあらゆる分野で、新しい需要を喚起する注目技術が目白押しだが、中でも今年の「TECHNO-FRONTIER 2015」で最も期待されているのが、SiC(シリコンカーバイド=炭化ケイ素)、GaN(ガリウムナイトライド=窒化ガリウム)などの次世代パワー半導体技術だ。パワー半導体はこれまでシリコン(Si)一辺倒の時代が続いていたが、SiC、GaNの登場によって今、急激に新しい波が押し寄せてきている。自動車や鉄道などでも採用が進んでおり、自動車業界ではとくにトヨタ<7203>が、電力ロスを大幅に低減し、ハイブリッド車の性能を飛躍的に発展させる技術として早くからSiCの開発に力を入れている。また小田急電鉄<9007>では2014年から通勤車両の1000系のリニューアルに着手しているが、その制御装置に世界で初めてフルSiC適用のVVVFインバータを採用したことでも話題となっている。
「SiCパワー半導体は、もはや次世代デバイスではなく普及する段階」と語るのは、テクノフロンティア出展企業の一つで、SiCパワー半導体の分野で業界をリードするローム株式会社<6963>だ。同社では2012年3月に世界で初めて、内蔵するパワー半導体素子を全てシリコンカーバイドで構成したフルSiC パワーモジュールの量産を開始して以来、1200V/120A、180A 品において、産業機器用途などで採用を伸ばしてきた。今年4月にも、産業機器や太陽光発電パワーコンディショナー等のインバータ、コンバータ向けに開発した1200V/300A 定格のフルSiC パワーモジュールを発表したばかりだ。
同SiCパワーモジュールは、チップ配置およびモジュール内部構造を最適化することにより、モジュール内部インダクタンスを大幅に低減できたことで、産業機器用途などで大電流化する際に課題となっていたスイッチング時のサージ電圧の影響を抑えることに成功した。産業機器用の大容量電源など、より大電力アプリケーションへの検討が可能となるほか、スイッチング損失を大幅に低減し、高周波駆動も可能となるため、周辺部品や冷却システムなどの小型化にも貢献する。
今回、テクノフロンティアのロームブースでは、SiC-MOSFET駆動用擬似共振AC/DCコンバータをはじめ、様々なアプリケーションの展示を予定しているようだが、「次世代技術ではない」SiCの姿をより具体的に見られそうだ。(編集担当:藤原伊織)