【電子部品業界の2015年3月期決算】「スマホと自動車」の需要拡大で増収増益が揃う好調な決算は今期も継続する見通し

2015年05月06日 21:02

 4月30日、電子部品大手7社の2015年3月期本決算が出揃った。京セラを除くと増収増益が揃い、日本電産、村田製作所、TDKは売上高が初めて1兆円を超えた。好決算をもたらしたのは拡大が続くスマホ、タブレット向け需要と電装化が進む自動車向け需要の好調で、為替の円安も増益に寄与した。それは2016年3月期も続くとみて、各社とも強気の業績見通しを出している。

 ■日本電産、村田製作所、TDKは1兆円企業に

 2015年3月期の実績は、日本電産<6594>は売上高17.5%増、営業利益31.1%増、最終当期純利益35.4%増の大幅増収増益。年間配当は前期比30円減の70円だが、期初の昨年4月に1対2の株式分割を行っているので実質40%の増配になった。売上高は1兆283億円で初の1兆円超えだが永守重信会長兼社長は涼しい顔で「通過点」と言う。「車載及び家電・商業・産業用」製品グループが成長して売上高が4600億円に達し、「精密小型モータ」製品グループの3979億円を初めて上回った。特に65.3%の成長を遂げた車載製品の売上高が1970億円に達して2041億円のHDDモーターに肉薄し、同社が言う「ビジネスポートフォリオ転換」(主役交代)を印象づける。

 京セラ<6971>は売上高5.5%増、営業利益22.5%減、当期純利益30.6%増の増収営業減益、最終増益。年間配当は前期比20円減の100円だが、前期は株式分割を実施して実質80円なので実質的に増配。機器は海外で複合機や携帯電話が売れ、部品はスマホ用セラミックパッケージ、車載用カメラモジュールが引っ張ったが、太陽電池の価格下落、棚卸資産評価損が減益の原因。通信機器は赤字に転落している。

 ローム<6963>は売上高9.6%増、営業利益64.2%増、経常利益64.9%増、当期純利益41.1%増の増収2ケタ増益。年間配当は前期比80円増の130円だった。電装化が進み世界的に生産が伸びる自動車向けのLSIやLEDドライバー、FAやエネルギー管理システムなど産業機器向けの半導体が伸び、為替の円安も大幅増益をもたらした。

 アルプス電気<6770>は売上高9.4%増、営業利益87.6%増、経常利益105.0%増、当期純利益142.7%増の増収増益。年間配当は前期比10円増の15円だった。センサーなど車載部品が伸び、アップルに供給したカメラの手ぶれ補正部品も好調で当期純利益は最高益を更新した。中期経営計画の車載市場向け売上2000億円、スマホ向け売上1000億円という目標を1年前倒しで達成した。

 日東電工<6988>は売上収益10.1%増、営業利益47.2%増、税引前利益50.0%増、当期利益49.5%増、最終当期純利益50.1%増の大幅増収増益。年間配当は前期比20円増の120円だった。液晶用偏光板は大型テレビ向けが好調で、スマホ、タブレット端末用の光学フィルムも好調。コストカットの効果も出て過去最高益を更新した。

 村田製作所<6981>は売上高23.2%増で1兆円を突破。営業利益70.4%増、税引前当期純利益80.1%増、最終当期純利益80.0%増という大幅増収増益。年間配当は前期比50円増の180円だった。センサー、LTE通信モジュールなどスマホやタブレット端末向けの市場が拡大してコンデンサーなど電子部品の増産が続き、最終利益が過去最高を更新した。為替の円安も輸出採算を好転させ増益に貢献している。

 TDK<6762>は売上高10.0%増、営業利益97.9%増、税引前当期純利益87.4%増、最終当期純利益203.5%増(約3倍)という増収、大幅増益。年間配当は前期比20円増の90円だった。売上高は初の1兆円突破。高周波部品など中国向けスマホ部品、センサーやコンデンサーなど自動車向け部品の販売が拡大した上に、円安が増益に寄与した。

 ■今期も意欲的な事業拡大投資で需要に応える

 2016年3月期の通期業績見通しは、日本電産は売上高11.8%増、営業利益16.9%増、最終当期純利益は18.1%増の900億円で3期連続の最高益を見込んでいる。予想年間配当は前期比10円増の80円。永守会長兼社長は最終当期純利益の目標を1000億円に置く。車載製品はHDDモーターに代わって事業の柱になりつつあるが、今後は自動車関連の部品会社を中心に年間1~2件のペースで買収を進め、2020年度までに国内外でのM&Aで売上高を5000億円上積みする方針。

 京セラは売上高4.8%増、営業利益71.3%増、当期純利益3.6%増の増収増益、営業利益V字回復を見込む。予想年間配当は前期と同じ100円。自動車とスマホは好調が継続し、太陽電池は拡販や原価低減で利益上積みを目指す。前期のような減損処理がなくなることも増益に寄与する見込み。

 ロームは売上高7.0%増、営業利益8.2%増、経常利益32.5%減、当期純利益33.8%減と増収、最終減益を見込む。予想年間配当は前期比据え置きの130円。今期も自動車用、産業機械用半導体の好調が続くとみている。

 アルプス電気は売上高2.5%増、営業利益1.8%増、経常利益5.4%減、当期純利益5.1%増の増収、最終増益を見込む。予想年間配当は前期比5円増の20円。自動車向け部品が引き続き好調に推移する見込み。

 日東電工は売上収益5.4%増、営業利益12.4%増、税引前利益13.3%増、当期利益13.7%増、最終当期純利益13.9%増の増収増益を見込む。予想年間配当は前期比10円増の130円。大型液晶向けの偏光板や光学フィルムは引き続き拡大が見込まれる。次のターゲットはIT化が進む自動車向け。医薬品もアメリカで新型バイオ医薬品の治験が本格化する見込みで、国内では3月に医薬品の受託製造に参入した。

 村田製作所は売上高11.2%増、営業利益16.5%増、税引前当期純利益5.7%増、最終当期純利益9.1%増の連続増収増益を見込む。予想年間配当は前期比20円増の200円。スマホ、タブレット向けのセンサー、通信モジュールは需要拡大が続くと見込んでいる。

 TDKは売上高9.0%増、営業利益31.1%増、税引前当期純利益27.5%増、最終当期純利益31.5%増の増収増益を見込む。予想年間配当は前期比30円増の120円。引き続きスマホ、自動車向けの電子部品が好調に推移する見込み。