2015年1月に施行された相続税改正によって、賃貸や店舗、事務所などを併用できる住宅の需要が増えている。財務省が発表している「相続税の負担割合の推移」をみると、前回の平成15年度の改正後は4.8%だった課税対象者が、今回の改正によって基礎控除額が引下げられたことで6.8%にまで増加することが分かる。とくに地価の高い地域や都市部に土地や家屋を所有していると、これまで「うちは土地も狭いし家も古いから、相続税なんて関係ない」と思っていた家庭でも、今回の改正で相続税の課税対象になってしまった可能性は大きい。納税は国民の義務とはいえ、先祖や親から相続する貴重な資産。少しでも節税して負担を減らし、有効に活用したいと思うのは当然のことだ。
課税対象額の減額を見込んだ相続税対策としては、大きく2つの方法がある。それは「二世帯住宅」か「賃貸併用住宅」に住まうことだ。
実家に親と同居して二世帯住宅を建築すると、相続時に「小規模宅地の評価減の特例」が適用され、土地の評価額を80%まで減額できる。例えば、土地の評価額が5000万円なら1000万円まで減額されるわけだ。原則同居していないと減額が認められないなど適用条件が厳しくなっているものの、もともと親と同居していたり、同居を検討している家庭にとってはそれほどハードルの高い条件でもない。加えて、親世代に建てた家がそろそろ建て替えやリフォームの時期を迎えている今、新築購入よりも有効な選択と言えるかもしれない。
二世帯住宅にとくに積極的なメーカーといえば、「ヘーベルハウス」ブランドを展開する旭化成ホームズだろう。同社は40年前に二世帯住宅という概念を市場に持ち込んだメーカーでもある。1980年には二世帯住宅研究所を設立し、二世帯住宅の研究に力を入れてきた。家庭用燃料電池「エネファーム」と太陽光発電システムでつくった電気と熱を二世帯住宅間で融通し合うシステムなど、二世帯の特性を活かした住宅づくりを行っている。
そして、もう一つの節税対策が「賃貸併用住宅」による「小規模宅地等の特例」の活用だ。被相続人の居住用部分に特例が適用されない場合でも、賃貸部分に対応する宅地については、200平方メートルの面積を上限として評価額の50%を減額することができる。賃貸として利用している部分は、もともと「貸家建付地」として20%程度減額され80%程度の評価額となっている。それが更に50%軽減されるから、賃貸部分については併せて60%程度減額が可能だ。そこで、これまで住居だったものを賃貸や店舗、事務所などの併用住宅に建替え、資産を活用しようとする動きが増えている。
そんな中、かねてより大手メーカーの中でもとくに店舗併用型住宅に力を入れてきたパナホーム<1924>が、店舗や事務所などのテナント用途に最適な『Vieuno PRO(ビューノ・プロ)』を新発売し、それを採用した日本初の6階建モデルハウスを東京新宿の展示場にグランドオープンして話題になっている。
同商品は、3階~7階建てまでに対応した住宅商品で、高さで有効面積を増やすだけでなく、柱と梁の架構体バリエーションを増やすことによって、最大9mのワイドスパンや最大3mのオーバーハングを実現していることが最大の特長だ。また、1階の有効天井高も最大3.15mとなっているので、開放感のある魅力的な店舗をつくることができる。さすがは、店舗住宅のパイオニアといったところだ。
二世帯にしても賃貸併用にしても、相続するような住宅がある場合、まずは専門家に相談してみるべきだろう。節税目的のつもりが、それだけにとどまらず、思わぬ収入増につながる可能性もある。資産は活用してこそ、はじめて資産といえるのだ。(編集担当:藤原伊織)