2015年1月1日の税制改正を控え、住宅市場では賃貸住宅経営への関心が高まっている。今回の税制改正の大きな特徴は、相続税及び贈与税のルールが大幅に変わることだ。基礎控除が縮小され、これまでは相続財産の合計が6000万円以上でなければ課税されなかったものが、来年1月1日以降は、法定相続人がひとりの場合は6000万円どころか、3600万円を超える相続財産がある場合は課税対象になってしまう。これによって、とくに都心部では2人に1人が課税対象になるとも言われており、「相続税なんてウチには無関係」とも言っていられない状況だ。うかうかしていると、相続税が払えなくて土地家屋を手放すような羽目にもなりかねない。
相続税対策としては二世帯住宅という手もあるが、土地の有効活用という面で考えると賃貸住宅経営には大きなメリットがある。最大の魅力は、もちろん家賃収入。入居者からの家賃収入を得ることで、将来の安定を見込むこともでき、暮らしにも大きなゆとりをもつことができる。また、賃貸併用住宅や店舗併用住宅にするなど、さまざまなプランが検討可能だ。住宅ローンの返済に副収入の家賃収入をあてることができる上、専用住宅として家屋を建設する場合よりも借り入れできる金額が増えるので、少し贅沢な仕様を取り入れることもできる。
また、賃貸併用住宅、店舗併用住宅で家を建てる場合、今回の相続税の改正によって、自宅部分と賃貸部分の「小規模宅地等の特例」の評価額減の他に貸家建付地としての評価減額を併用できるようになる。さらに賃貸部分の評価額は居住建物の評価額よりも30%ほど減額になるのだ。今回の税制改正は増税のように言われることも多いが、もともと賃貸併用住宅や店舗併用住宅を検討していた人にとっては、逆にメリットが多いともいえる。
このような状況の中、住宅メーカー各社も賃貸住宅商品に力を注いでいる。
メーカーそれぞれに特色を出し、オーナーや入居者の心に訴えかけるような商品を展開しているが、その中でも住宅大手のパナホームの「ラシーネ」の視点が面白い。
「ラシーネ」とは、同社が提案する女性の視点や感性に応える賃貸住宅コンセプトの商品の総称だ。創業者である松下幸之助氏の「住まいは人間形成の道場である」という想いを根底に置き、「美しい」・「楽しい」・「優しい」をくらしの価値の大きな3つのテーマとして住空間を創造している。2012年7月には社内研究組織として、同社やパナホーム不動産株式会社、パナソニック株式会社、女性プロデューサー、女性建築家等で構成する「ラシーネ研究所」を設立し、あらゆる世代の女性の声に耳を傾け、女性視点で価値観やライフスタイル、ニーズなどを研究し、女性ならではのこだわりや理想に応える住宅の企画・開発を行っている。キャッチフレーズも独特で「入居者にトキメキを、オーナーさまに感動を」となっており、トキメキという住宅業界では珍しい言葉が使われているあたりも面白い。
同社では、近畿地区で「ラシーネ」を本格的に展開するべく、11月に本社ビル1階のショウルーム内に、近畿地区初となる賃貸住宅モデルルーム「ラシーネ・テーマスタジオ」をオープンした。また、2階建て全12戸のシングル向けの賃貸住宅で、京都初の実例となる「ラシーネ五條」内にモデルルームをオープン、さらにこれらを活動拠点に、女性8名からなる「ラシーネ」提案プロジェクトチームを編成し、近畿地区での営業力強化を図る。今後は、全国の都市部へと同様の取り組みを展開していく予定だという。
オーナーにとっても、美しく暮らしたいと願う女性店子が多いことは、経営する賃貸住宅のイメージアップにもつながり、入居希望者を募る際にも大きなメリットになるのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)