今日、電気エネルギーの有効利用が世界的に叫ばれている。将来必ず到来するともいわれる世界的な電力危機を回避するために、発電した電力を「効率よく輸送し、いかにロスなく使えるか?」という課題に対して、電力変換技術に注目が集まっている。その電力変換における損失を劇的に減らすキーデバイスとして注目され、大きな期待を集めているのがSiC(炭化ケイ素、シリコンカーバイド)パワー半導体だ。
5月20日から千葉・幕張メッセで開催された「TECHNO-FRONTIER 2015」で、そのSiCパワー半導体を集中展示したローム。同社の展示発表によると、SiCパワー半導体の大きな特徴は、Si半導体比10倍ともいわれる高い絶縁破壊強度(電気的な強度)と、低On抵抗(導通損失が少ない)であり、システム全体の省エネ化が進むとしている。また、高い耐熱性も兼ね備えているので、Siパワー半導体と比較して、システムの冷蔵装置を小型化、または不要にできる。
ロームは2010年に「SiC-MOSFET」の量産化に成功するなど、業界をリードしてきた同社のSiCパワー半導体の製品群は、逆回復損失を大幅に低減したSBD(ショットキーバリアダイオード)から始まり、車載の急速充電回路などでの採用が進んでいる。
そして、上記のふたつを組み合わせたローム社製のフルSiCパワーモジュールは、従来のSi(IGBT)パワーモジュールに比べて約77%のスイッチング損失低減が計れるという。
さらに、同社が4月23日に発表した、世界初となるダブルトレンチ構造の「SiC-MOSFET」(第3世代)を採用した、第三世代のフルSiCパワーモジュールは、第二世代のフルSiCパワーモジュールに比べて約42%の損失低減を実現しており、SiCパワー半導体のさらなる進化を達成している。
この新しい第三世代のSiC-MOSFETやフルSiCパワーモジュールは、太陽光発電用パワーコントロールユニットや産業機器向けの電源、あるいは工業用インバーターなどの大電力機器用途における小型化、電力損失低減に貢献するものとして期待されている。(編集担当:吉田恒)