どれぐらい背伸びしているかは、29日終値20563.15円のテクニカル・ポジションやオシレーター指標を見れば、一目瞭然だ。
5日移動平均の20487円も、25日移動平均の19973円も、75日移動平均の19363円も、全て下にある。ボリンジャーバンドでは25日線+1σの20340円と+2σの20706円の間にあり、前々週末と同様にニュートラル・ゾーン(19607~20340円)から上にずれている。もし29日終値が20300円程度ならそのゾーン内におさまっていた。日足一目均衡表の「雲」は18745~19603円に横たわるが、その上限は960円も下にある。今週は6月3日までに雲の下限も19000円台に乗り、上限は19726円まで上昇するが、もし急落して「雲タッチ」するようなら、それは2年前の「5.23」にも匹敵するような緊急事態だろう。日経平均はいま〃浮き世の巷〃からはるかに遊離した〃宇宙空間〃を飛行している。
日経平均がはるか上空の宇宙を周回しているから、オシレーター系指標は「買われすぎ」「買われすぎ」の大行進。25日移動平均乖離率は+2.94%で買われすぎラインの+5%には届かず、25日騰落レシオは114.73でこれも買われすぎ水準には達してないが、あとは90.54のストキャスティクス(9日・Fast)も、85.4のRSI(相対力指数)も、100.0のRCI(順位相関指数)も、91.7(11勝1敗)のサイコロジカルラインも、92.9のボリュームレシオも、ことごとく「買われすぎシグナル」が点灯している。11連騰もすると、やはりそうなってしまう。
そんな状況の今週だから、上値は非常に取りづらい。もし、過去最高記録の14連騰(1960~61年)を抜く15連騰を達成して「大相撲なら全勝優勝だ」とか、「ITバブル最高値」2000年4月12日の20833.21円に「一気にチャレンジだ」などと息巻いている人がいたら、それは調子に乗りすぎ。それを実現させるにはドル円が125円台いや126円台に乗せるようなドル高円安進行が必要になるだろう。だが、そこまでいくと、麻生財務大臣どころか黒田日銀総裁や安倍首相まで「円安のペースが早すぎる」と牽制球を投げかねない。急激な通貨安は輸入物価の高騰で悪性インフレに火をつける恐れがあり、円安は全てを癒す薬どころか、劇薬に変身してしまうからだ。過ぎたるは、なお及ばざるが如し、である。
上値のヒントは、前週の日経平均のザラ場の値動きにある。27日までは20500円の壁をなかなか突破できなかったが、28日、29日は20500円台にしっかり乗せていた。しかし20600円台となるとその時間帯は短く、1時間も保持できていなかった。この価格帯に上値のレジスタンスがあった模様で、これが今週の終値ベースの上値の限界とみる。もし今週初めに連騰記録が続いたとしても、それは数円から数十円の小幅高になるだろう。
アメリカの経済指標が多くNYダウが変動しそうな上に、東京市場でも週末のアメリカ雇用統計待ちの様子見が出そうだ。ECB理事会があり、ギリシャ問題もどうなるか予断を許さない。「メジャーSQ前週」ではあるが、年初来高値圏では上昇余地は乏しい。
一方、下値を考えると、11連騰の出発点の5月15日終値の19732円は25日移動平均より下なので低すぎるが、その3営業日後の20日から22日にかけての終値20196~20264円は今週、調整局面として十分にありうる水準。22日のドル円レートは121円台だったから、もし為替に裏切られて、前週の急速な円安進行に助けられた上昇分がそっくり剥落してしまったとしても、20200円付近で下げ止まることならありそうだ。
ということで、今週の日経平均終値の変動レンジは20200~20600円とみる。11連騰を記録した前週、為替のフォローの風で出現した日経平均のかりそめの「バルジ(突出部分)」は、為替の風がアゲインストにひっくり返ったら、1944年冬のアルデンヌの森のドイツ軍機甲師団のように殲滅させられる運命にある。(編集担当:寺尾淳)