裁定買い残が積み上がったところで、今週末の12日に「メジャーSQ」を迎える。6月のSQ値は19225円で、5日の終値はそれより1235円も高くなったから先物の6月限から9月限への「ロールオーバー」は順調に進み、SQ週は平和裡に通過できるなどと油断してはいけない。たとえばギリシャ問題が行き詰まったりすると、リスクオフの手じまいに動く外国人投資家の裁定解消売りで大幅下落というシナリオは十分ありうる。「外国人は逃げ足が速い」というのは、現在の東京市場をウォッチする上での大原則だ。
もっとも、今週の外国人投資家の動向を占う上で重要な5日のアメリカの雇用統計は悪くなかった。失業率こそ市場予測よりも悪い5.5%だったが、非農業部門雇用者数の伸びは昨年12月以来5ヵ月ぶりの大幅増加の28万人で、21~23万人という市場予測を大きく上回り、ネガティブサプライズだった3月の数値も上方修正された。ウィーンのOPEC(石油輸出国機構)総会の結果は大方の予想通り、「価格を下支えする減産は必要なし」という意見が大勢を占め12ヵ国で日量3000万バレルという生産目標の据え置きを決定。昔と違って今のOPECには、協調減産でNYMEXの原油先物市場に正面対決して価格を吊り上げるような意思も能力もない。5日のNYダウは早期利上げ警戒で56ドル安だったが、ドル円は125円台後半まで円安が急進。CME先物清算値は20580円だった。
前週の日経平均の週間騰落は4週間ぶりに下落して102円安。5日の終値20460.90円のテクニカル・ポジションは、前々週末の「買われすぎ」のオンパレードが緩和した。
前週は5日移動平均線をはさんで1日、2日は上、3日は下、4日は上、5日は下と行ったり来たりし、5日終値時点では5日線は20507円で上にある。25日移動平均線は20066円、75日移動平均線は19540円でともに下にある。ボリンジャーバンドは19642円の25日線-1σと20489円の+1σの間のニュートラル・ゾーンに戻った。日足一目均衡表の「雲」は75日線を内包して19058~19726円に位置する。今週は雲の上限は19672円まで下がって一時停滞するが、下限は19274円まで上昇する。それでも上限は734円も下にあり、今週はよほどのバッドニュースでも起こらなければタッチすることはないだろう。ちなみに雲の上限は7月1日に2万円を超える予定である。
11連騰時点の前々週5月29日は「買われすぎ」シグナルがゾロゾロ点灯していたオシレーター系指標だが、5日にはその数が減っている。RSI(相対力指数)は84.9で70をオーバー、RCI(順位相関指数)は+59.4で+50をオーバー、ボリュームレシオは78.6で70をオーバーし、それぞれ買われすぎシグナルがまだ点灯中だが、騰落レシオは109.77で買われすぎラインの120から離れ、前週1日に12連騰を達成し平成で初めて100に到達したサイコロジカルラインは75.0(9勝3敗)まで下落。ストキャスティクス(9日・Fast )は52.89で、買われすぎシグナルは消灯した。25日移動平均乖離率は+1.9%と低い。
そのため、テクニカル的にみると5日終値は上にも下にも動きやすいポジションにある。SQ週の火曜日(9日)と水曜日(10日)はいつもなら「鬼門の日」で、ましてや今月は鬼が金棒をフルスイングするメジャーSQだが、高値圏なのでやはりロールオーバーがある程度は進むと考えられ、「SQ週ゆえ先物主導でボロボロに下落」という事態はちょっと考えにくい。注意すべきなのはむしろギリシャ問題や、前週に大きく変動した日米欧の債券市場、不安定化した上海市場や要人のドル高や円安へのけん制発言などのリスクオフ要因で、特に日欧米の金利動向は株価にダイレクトに影響するので警戒を要する。
今週は、たとえ1日限りだとしても、為替の円安のフォローの風を受けるなどして5日移動平均線を大きく超え上値を追えるチャンスがあるとみる。その上限の目安としては5月28日のザラ場年初来高値20655円付近が考えられる。もっとも20600円より上のレベルになると12連騰中でも短時間で押し戻されていたので、長くは続かないだろう。
一方、下値の目安はギリシャ、中国、債券市場(金利)、要人発言など突然のリスクオフ発生を想定すると、けっこう下までみておいたほうがいいかもしれない。具体的に言えば、ザラ場中に25日移動平均線の20066円を割り込む事態まであるとみる。それでも安値引けにはならず大引けまでに底堅くリバウンドすることが想定されるので、20100円前後が下限だろうか。
ということで、今週の日経平均終値の変動レンジは20100~20650円とみる。前週の終値の週間値幅は109円しかなかったが、今週はボラティリティの上下動が激しい週になりそうだ。日経平均は1日まで12営業日も上昇し続けたが、本来は山あり谷あり、上がったり下がったりするからこそ、株式投資には「妙味」というものがある。「束縛があるからこそ、私は飛べるのだ。悲しみがあるからこそ、私は高く舞い上がれるのだ。逆境があるからこそ、私は走れるのだ。涙があるからこそ、私は前に進めるのだ」(マハトマ・ガンジー)(編集担当:寺尾淳)