今年もランキングトップのトヨタ・アクア、欧米では「Prius C」の名で販売されているハイブリッド専用車。4月からエコカー減税の基盤となる燃費基準が非常に厳しい平成32年燃費基準になったことでエコカー減税に適合するクルマが4月以降に大幅に減った。4・5月の上位人気モデルは、厳しい燃費基準をクリアする“エコカー減税対象車”だ。
全国軽自動車協会連合会が発表した4月の軽自動車新車(乗用車)の国内販売台数は9万3134台。対前年同月比73.1%、実台数で3万5205台も減った。5月も大幅減の傾向に変化はなく、軽乗用車の販売台数は9万8660台(前年比78.5%)、2万7057台の減少だ。
今年1月、政府閣議で平成27年度税制改正大綱が決まった。そこには“新エコカー減税制度”が盛り込まれ、自動車取得税と同重量税の軽減処置が決まり、2015年4月から新型車に求められる燃費基準が大きく変わった。これまでの平成27年度基準が平成32年度基準に改められ、自動車取得税、同重量税の減税対象となっていた車種が大幅に減ったのだ。加えて軽自動車税増税に伴って“軽自動車エコカー減税”が導入され、ますます複雑な税制となった。この4月の自動車関連税制改正が、新車販売に大きく影響した。
軽自動車の販売減は、新車(乗用車)を対象にした軽自動車税が、これまでの7200円から1.5倍となる1万0800円に4月から増税された影響とみられる。4月の販売落ち込み幅は東日本大震災後の2011年5月の前年比74.6%以来の大きさ。駆け込み需要があった今年3月の販売台数と比較すると半分近い台数だ。
軽自動車の通称名別の販売台数で4・5月連続トップとなったのは、ホンダN-BOXで、4月に1万0218台、5月は1万0398台と軽自動車で唯一2カ月連続1万台超えを記録した。2位以下は入れ替わりが激しく、4月に1万0015台で2位だったスズキ・ハスラーが5月に8位(7834台)まで落ち込んだ。一方で4月に7432台で6位だった日産デイズが5月に急浮上、9452台で2位となるなど出入りの激しい展開だ。
一方、日本自動車販売協会連合会(自販連)によると軽自動車をのぞく新車(登録乗用車)の4月の販売台数は17万0240台で、前年同月比102.9%。前年同月販売台数を9カ月ぶりに上回った。次ぐ5月も台数で18万0759台(前年比101.2%)となった。消費増税の影響が薄まりつつあることがフォローの風になったようだ。
登録車では前年とのモデル別販売傾向に大きな違いはない。トヨタ・アクア、トヨタ・プリウスのトヨタのハイブリッド2台とホンダ・フィットが上位の常連だ。が、4月に大規模なマイナーチェンジを実施したトヨタ・カローラが5月の販売で2位に食い込んできた。カローラは、この4月末日本国内で累計販売1000万台を記録したばかり。いずれにしても、この4車種はハイブリッド専用車およびバイブリッド車をラインアップするモデルだ。
ミニバンでも上位に顔を出すトヨタ・エスクァイアはハイブリッド車を持つ。5月に9位にランクインしたSUVのホンダ・ヴェゼルもハイブリッド車を揃え、フルモデルチェンジを経て急浮上したホンダ・ステップワゴンは、世界の自動車トレンドであるダウンサイジング・ターボエンジンを搭載している。日産車としてトップ10(登録車)に唯一ランクインする日産ノートもダウンサイズ・エンジン搭載車を揃えるモデルだ。トップ10の常連であるマツダ・デミオは国際的に評価の高い小さなクリーンディーゼルエンジン搭載車である。
こうしてランキング上位モデルを概観すると、何らかの環境対応性能を付加したクルマで占められていることが分かる。
その訳は冒頭で記した税制改正大綱に“新エコカー減税制度”が盛り込まれ、自動車取得税と同重量税の軽減処置が決まり、自動車の燃費基準が2015年4月から大きく変わったことが影響している。ニッポンのこの春からの自動車関連税制改正が、自動車販売ランキングに大きく影響を与えたというわけだ。
エコカー減税の基盤となる燃費基準が非常に厳しい平成32年燃費基準になったことでエコカー減税に適合するクルマが4月以降に大幅に減った。4・5月の上位人気モデルは、厳しい燃費基準をクリアする“エコカー減税対象車”が中心なのだ。
しかし、5月の新車(乗用車)販売を登録車+軽自動車総合で見ると以下のような順位。1位から順に列記すると「アクア」「N-BOX」「デイズ」「カローラ」「プリウス」「タント」「スペーシア」「アルト」「ワゴンR」「ムーヴ」となり、ベスト10台中7台が軽自動車である。このあたりの構成は前年とあまり変わっていない。(編集担当:吉田恒)