徴兵制は自民憲法草案でも禁止されている 総理

2015年07月14日 09:27

 安保法案への理解を広める一環で安倍晋三総理と党女性議員との対談による「安保法制のナゼ?、ナニ?、ドウシテ?」の5回シリーズの最終回が「やっぱり心配、徴兵制」をテーマに、総理と丸川珠代参議院議員との間で13日夜、党の動画サイト「カフェスタ」で行われた。冒頭、丸川議員は「なぜかしら、徴兵制の話が出てくる。集団的自衛権の解釈変更と同様に、徴兵制も可能になるのではないかと漠然とした不安もあるようです」と総理にふった。

 本来、集団的自衛権の行使は憲法上、許されないとしてきた歴代内閣の解釈を、安倍内閣によって行使できると解釈変更し、閣議決定してしまったため、法的安定性が損なわれ、徴兵制は憲法18条の苦役にあたるためとれないとしている政府見解にも不安定さが生じてしまった。集団的自衛権の解釈変更と同様に、徴兵制も可能になるのではないかと危惧する声にどう答えるのかと聴くべきだった。

 安倍総理は「なぜかしら」の質問に「いつかは徴兵制になるのではというキャンペーンを張っている。意外とそうかもしれないと不安に思っている方はたくさんいらっしゃる。これは、典型的な、無責任なレッテル貼りと思う。憲法18条には意に反する苦役は駄目ですよと書いてある。徴兵制度の本質は意思に反して強制的に兵役の義務を負う。なので、徴兵制は明確に憲法違反。これは憲法解釈で変える余地は全くありません。はっきり申し上げておきたい」と強調した。

 安倍総理は「意に反する苦役は駄目と憲法にはっきり書いてあるので、政権が変わろうと、変わることはありません」と明確に示した。

 しかし、閣内の石破茂地方創生担当大臣などは、閣僚にいる間は当然これに従うとしながらも、個人としては徴兵が苦役と言うのには違和感を持つとしている。

 現行憲法下の解釈で「徴兵制は絶対にない」と丸川議員が確認し、そのうえで「自民党は憲法を改正しようとしている。そこも変えちゃうのじゃないのという意見もある」と問うと、安倍総理は「自民党の憲法改正草案の中にも、現在の憲法18条、意に反する苦役は駄目ですよという規定は書いてあるので、自民党草案が実現したとしても、徴兵制は禁止されている」とした。

 安倍総理は「防衛政策上、徴兵制を導入する合理的理由はない」とし「防衛装備がハイテク化されているため、ハイテク技術を身に着ける必要もある。兵士として十分に役に立つためにはハイテクを使いこなせるようになるのに時間がかかる。徴兵制のように短時間でぐるぐる回っていくという仕組みでは使いこなす前にやめてしまう。徴兵制は自衛隊にとってかえって負担にしかならない」と語った。

 しかし、逆にハイテク化されれば、操作がより簡略化でき、実効を期待することも部隊の所属によってはできるのではないか。武器のハイテク化は操作性や修復性においても並行して追及されるだろう。防衛装備のハイテク化には操作性で逆もあり得る(扱いがより簡易になる武器も出てくるのでは、との)疑問には対話の中に提起しなかった。

 また、自衛隊志願者について、安倍総理は「今、自衛隊への志願者は7倍ある。閣議決定した昨年以降でも7倍ある。東日本大震災や御嶽山噴火での救助・捜索する自衛隊の姿をみて、我々が守るんだという、意義ある仕事、やりがいのある仕事をしたいと思う人たちがたくさんいる。誇りに思います。そういう若者がいなくなったら国は滅亡していくのではないかと思う」と集団的自衛権の行使容認で任務が増え、一方で少子化での人口減少があっても志願制で自衛隊は維持できるという考えを発信した。

 しかし、自然災害で被災者を救出するのと、「現に戦闘現場ではない」というだけのエリアで活動する状況に身を置く可能性を踏まえなければならない安保法案成立後の自衛隊に対する志願者数に将来的にも変動がないと言えるのか。疑問は残る。安倍政権が「愛国心」教育を唱える背景がこうしたところにもあるのかと疑って掛かる見方さえでてきそう。(編集担当:森高龍二)