第3は国連PKO活動での武器使用の問題だ。国際社会の中で積極的に自衛隊を活用し、国連PKO活動でリーダー的役割を果たすことによって、常任理事国入りへの環境づくりも視野に入れているのかと憶測するが、単純に人道的な面での役割意識が強いのかもしれない。
国連平和維持活動(PKO)幹部として東ティモールなどで武装解除を指揮した東京外大大学院教授の伊勢崎賢治氏はNHK番組でPKOの役割の軸が「住民保護」になりつつあると指摘した。
住民保護を実効あるものにするには、自ら攻撃されていなくても住民を守るために攻撃する相手を制圧しなければならない。武器を自己防衛(正当防衛)だけでなく、一般市民を守るために使わざるを得ないケースが生じる可能性が出る。
しかし、一般市民を守るために武器を使えば、任務遂行のための緊急避難行為であったとしても、相手にすれば、敵対する存在で、銃撃戦になる可能性は高い。敵対勢力から日本が攻撃対象になる確率はこれまでと比較にならない高さになるのは容易に推測できる。安倍総理は認識していて、このリスクを日本は負うべきだと考えている。
安倍総理の底流にはこうした思いがある。だから、安保法案成立前に日米ガイドラインに集団的自衛権が行使できなければできないはずの「ミサイル迎撃での協力」やホルムズ海峡などを念頭にした「機雷掃海協力」が盛り込まれた。
条約も法律も憲法の範囲内でなければならないことは言うまでもない。集団的自衛権の行使を含む法案を、国会議論もなく、しかも法案通過前に米国議会で「安保法案をこの夏までに成就させる」と演説し、日米ガイドラインの見直しを図るなどは、野党だけでなく、自民党の元幹部らからも批判が出ているが当然だ。
それでも、安倍総理は3分の2を上回る議席を与党で確保できているこの国会(衆院)で成立させる意を強くしている。
法案成立後の組閣で安倍総理は衆院解散に打って出る可能性が高い。法案成立前の解散はない。参院が採決しなければ60日ルールを使うのも明らか。これまでの強引なまでの手法を無にできない。法案は成立させる。
今国会の会期を95日延長した6月22日の代議士会で安倍総理は言った。「国会においてしっかり議論していくことによって、国民の皆さまの判断を受けようではありませんか」。国民による最終判断は政権交代を含む総選挙しかない。(編集担当:森高龍二)