輸入車マーケットにおいて販売台数で常勝のフォルクスワーゲンが2015年上半期の輸入車新規登録台数でメルセデス・ベンツに首位を奪われた。
そんな中、フォルクスワーゲンは新型パサートの販売を開始した。「パサート」は、1973年に初代が発売されて以来、42年間にわたってフォルクスワーゲンの主力商品であり続けてきたミドルサイズカーの世界的ベストセラーだ。2013年には、全世界での販売台数が、約110万台に達するなど、同社のラインナップのなかで、ゴルフと並ぶ世界戦略車といっていいだろう。
8世代目にあたる新型はフォルクスワーゲン・グループの新しいモジュラー戦略「MQB」に基づいて開発されたモデルの1台だ。新型は本国ドイツを含むヨーロッパ地域で昨年秋にデビューしているが「カーオブザイヤー2015」に選ばれている。内外装だけでなく、シャシーからボディの骨格まで全面的に再設計されており、ダウンサイジングエンジンの1.4リッター TSIも新開発のMQB ユニットとなった。
フォルクスワーゲンは、上期はポロのビッグマイナーチェンジがあったものの、主力モデルのゴルフの新車効果がいよいよ薄れてきたり、他の車種の多くが、モデル末期になっていたことが2位に甘んじてしまった大きな要因なのかもしれない。もちろんフォルクスワーゲンはメンツにかけても年間販売台数は死守しようとするだろうから下半期、このパサートのフルモデルチェンジを始めとして、あの手この手の反撃をしかけてくることは間違いないだろう。
しかし、筆者は長い目で見る、というよりそう遠くない将来には、メルセデス・ベンツが常に首位の座につくことになるだろうと踏んでいる。というのも、そもそもメルセデス・ベンツとフォルクスワーゲンは競合するようなモデルはなかった。メルセデス・ベンツのライバルはあくまでBMWでありアウディだったのだ。フォルクスワーゲンは、昔も今もゴルフやポロをメインとした300万円前後の価格帯のコンパクトクラスを中心に販売している。その価格帯のメルセデス・ベンツのモデルは、かつてはせいぜいAクラスだけで、後は400万円から上は1000万円のまさにプレミアムクラスだったのである。
要するにメルセデス・ベンツがフォルクスワーゲンの土壇場であるゾーンに殴り込みをかけて、それが現時点で成功したというわけであろう。ともあれ、両社の熾烈な闘いは決してユーザーにはマイナスにはならないのだから、大いにいろいろな意味で切磋琢磨して欲しい。(編集担当:久保田雄城)