2014年、国内の自動車メーカーの施策を振り返ると、トヨタ自動車が世界で初めて燃料電池車(FCV)「MIRAI」の市販をスタートさせたことが大きなニュースだ。これは衆目の一致するところだろう。トヨタFCV「MIRAI」を「究極のエコカー」と報道するメディアが多いが、筆者は「究極のゼロエミッション・ヴィークル(ZEV)」時代の幕開けを告げる年となったとしたい。「MIRAI」が広義でエコカーか否かは、車両価格がプリウス程度になるかどうかにかかっていると思うのだ。
「MIRAIの全国での受注台数は既に1000台規模」だという。トヨタが12月15日に発売したFCV「MIRAI(ミライ)」は、水素と空気中の酸素から電気を作ることで走行時に二酸化炭素(CO2)を排出しないゼロエミッション・ヴィークルだ。こうした意味では電気自動車もZEVになる。
現状でトヨタMIRAI は生産体制に限界があることから国内の年間販売目標を400台に絞っているが、受注はすでに大きく上回る。「単なる新型車ではなく、変革への第一歩」(豊田章男社長)であり、“MIRAI(未来)のクルマ”への期待は大きい。
コンサルティング会社(トーマツ)の試算によると、2030年にはFCVの年間販売台数が40万台に達し、経済効果は4兆4000億円になるという予測もある。2014年は「FCV元年」として歴史に残ることになるのだろうか。
ところで、足元の国内自動車販売は、4月の消費増税で大きく下振れしたものの、2014年間では登録乗用車販売が前年割れだが、軽乗用車がカバーして乗用車販売は登録乗用車+軽乗用車の合計で460万台を超えそうな状況。輸入車を中心とした高級車が好調な一方、軽乗用車も1~11月累計前年比107.9%に達する伸び。2014年は自動車販売の二極化が鮮明になった年でもある。
輸入ブランド別では高い伸びを見せたメルセデスが1~11月累計5万3535台(前年比112.7%)と好調。台数ではフォルクスワーゲンが5万9989台で輸入車トップ。車名別販売台数では、ハイブリッド専用車のトヨタ・アクアがホンダ・フィットを抑えてトップ。2015年にモデルチェンジが予定されているトヨタ・プリウスが3位と頑張っている。
環境対応モデルとしては、マツダが7年ぶりに全面改良して9月に発表した小型車「デミオ」も話題を呼んだ。国内メーカーの小型車として初めて環境性能の高いディーゼルエンジン車を投入。燃費性能は軽油1リットル当たり最大30kmと、軽自動車とハイブリッド車を除くエンジン搭載車では国内最高水準。独自の環境技術「SKYACTIVE」を全面的に採用し「2014-2015日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)」を受賞した。
高級モデルの新型車投入も2014年の特徴だ。トヨタは「レクサス」の新型SUV「NX」を7月に投入、10月に4年ぶりとなる大型スポーツクーペ「RC-F」を発売した。海外メーカーではメルセデス・ベンツ日本が「4月の消費増税をにらんで、この1年間切れ目なく新車を投入した」効果で、2014年は過去最高の販売を記録した。輸入車(日本メーカー除く)の国内販売は1~11月で25万台と、前年同期比3%増。登録車(排気量660cc超)に占めるシェアも8%を超え過去最高水準にある。
一方、スズキとダイハツ工業が激しいシェア争いを続ける軽自動車も市場を牽引した。スズキは1月に発売した「ハスラー」が予想を上回る人気となり、8年ぶりに軽の国内販売で首位を奪還した。このハスラーにはダイハツ、ホンダが追随する格好で新型車を投入している。ダイハツは「軽の新たな価値を届け、軽市場をけん引したい」として軽自動車で唯一のオープンスポーツ「コペン」を復活させた。
きちんとした統計数字は出ていないが、2014年の国内新車販売(商用車&軽自動車を含む)は前年比3%増の約556万4000台となったもよう。消費増税前の駆け込み需要の効果で8年ぶりの高水準となった。うち軽が7%増の227万2千台と全体に占める比率が通年で初めて40%を超えた。
このように軽自動車と500万円超の高額なクルマの販売が伸びている二極化現象、果たして2015年はどう推移するのだろう。(編集担当:吉田恒)