戦後70年の総理談話に関する有識者懇談会(20世紀を振り返り21世紀の世界秩序と 日本の役割を構想するための有識者懇談会)が報告書をまとめ、6日、安倍晋三総理に手渡した。
報告書に「侵略」を用い、「日本がアジア解放のために戦ったと主張することは正確ではない」とも明記している。
報告書は歴史認識においては「日本は満州事変以後、大陸への侵略を拡大し、第一次大戦後の民族自決、戦争違法化、民主化、経済的発展主義という流れから逸脱して、世界の大勢を見失い、無謀な戦争でアジアを中心とする諸国に多くの被害を与えた。特に中国では広範な地域で多数の犠牲者を出すことになった」とし、「大陸への侵略を拡大」との表記を用いた。
これについては「国際法上『侵略』の定義が定まっていないことや歴史的に考察しても、満州事変以後を『侵略』と断定する事に異論がある」など「複数の委員から『侵略』と言う言葉を使用することに異議がある旨表明があった」との注釈もついた。しかし、本文には「大陸への侵略を拡大」とした。
また報告は「1930年代以後の日本の政府、軍の指導者の責任は誠に重いと言わざるを得ない」とし、「日本の1930年代から1945年にかけての戦争の結果、多くのアジアの国々が独立した。多くの意思決定は自存自衛の名の下に行われた(もちろん、その自存自衛の内容、方向は間違っていた)のであって、アジア解放のために、決断をしたことはほとんどない」と断定。
報告は「アジア解放のために戦った人は勿論いたし、結果としてアジアにおける植民地の独立は進んだが、国策として日本がアジア解放のために戦ったと主張することは正確ではない」としている。
報告書は「20世紀から汲むべき教訓」として「第1に、国際紛争は力によらず、平和的方法によって解決するという原則の確立。第2に、民主化の推進。全体主義の国々において、 軍部や特定の勢力が国民の人権を蹂躙して暴走した結果、戦争に突入した経緯を忘れてはならない。第3に、自由貿易体制。大恐慌からブロック経済が構築され、国際貿易体制が崩壊したことが第二次世界大戦の要因となった。第4に、 民族自決。大国が力によって他国を支配していた20世紀前半の植民地支配の歴史は終わり、全ての国が平等の権利と誇りをもって国際秩序に参加する世界に生まれ変わった。第5に、これらの誕生間もない国々に対して支援を行い、経済発展を進めることである」と20世紀前半の悲劇によって、これらを学んだとしている。
報告書は、中国との関係について「過去への反省をふまえ、あらゆるレベルにおいて交流をこれまで以上に活発化させ、これまで掛け違いになっていたボタンをかけ直し、和解を進めていく作業が必要となる」とした。
韓国との関係においては「1998年の日韓パートナーシップ宣言において、植民地により韓国国民にもたらした苦痛と損害への痛切な反省の気持ちを述べた小渕首相に対し、金大中大統領は、小渕首相の歴史認識の表明を真摯に受けとめ、これを評価し、両国が過去の不幸な歴史を乗り越えて和解と善隣友好協力に基づいた未来志向的な関係を発展させるためにお互い努力することが時代の要請であると述べた。にもかかわらず、その後も、韓国政府が歴史認識問題において『ゴールポスト』を動かしてきた経緯にかんがみれば、永続する和解を成し遂げるための手段について、韓国政府も一緒になって考えてもらう必要がある」とし「二国間で真の和解のために韓国の国民感情にいかに対応するかということを日韓両国がともに検討し、一緒になって和解の方策を考え、責任を共有することが必要」としている。(編集担当:森高龍二)