「しなやかな黒髪」とは、日本人女性を賛美する言葉の一つとなっているが、そのような髪質になる要因とは何だろうか。花王<4452>ヘアケア研究所は、日本人女性の髪の「しなやかな髪質」に着目し、「しなやかな動きのある美しさ」の要因を、これまで積み重ねてきた調査・研究知見をベースとして科学的視点から詳細に解析した結果、「毛髪表層は柔軟で毛髪内部は弾力がある二層状態の物理的性質を持つこと」がその一つであることを解明した。
「しなやかな髪質」という髪質を先天的に保有するヒトとそうでないヒトのうち、特徴的な10人の毛髪を用いて、その内部構造を詳細に解析した。その結果、蛍光染料による染め分け技術を駆使することで、「しなやかな髪質」の毛髪においては、表層付近にオルト構造を持つコルテックス細胞(繊維がスパイラルにねじれて並んだ細胞) 、内部にパラ構造を持つコルテックス細胞(繊維が平行に並んだ細胞)が多く配された二層構造である特徴を見出した。
先天的に「しなやかな髪質」の毛髪は、コルテックス細胞の構造の分布に偏り(二層構造)があることから、毛髪の表層と内部で物理的性質の違いがあり、このことが「しなやかな髪質」の要因ではないかと考えたという。
そこで、後天的な変化(化学処理などのダメージ)がある一般的な実態毛まで範囲を広げて、「しなやかな髪質」のヒトと「しなやかでない髪質」のヒトのうち、特徴的な50人の毛髪を抽出して、その物理的性質の詳細な解析を進めた。その結果、『「しなやかな髪質」は、「表層は柔軟で内部は弾力がある二層状態」という物理的性質を持つこと』を解明した。
花王は、美しく健康的な髪質について、40年以上の長きにわたり、のべ10万人以上の女性を対象とした髪質実態調査を通して、髪質の要因を解き明かす調査・研究に注力し、毛髪科学の研究と新しい技術の開発を積み重ねてきた。これまでに培ってきた長年の毛髪科学の研究の知見をベースとして、「しなやかな動きのある美しい髪」の要因を探り、日本人女性の毛髪の微細な内部構造及び物理的性質を広く詳細に解析し、今回の研究にいたったという。
髪質は遺伝などにより人それぞれで異なり、さらに同じ人でも、毎日の洗髪・ヘアケア行動などの外的ストレスや、ホルモン・加齢変化などの内的ストレスによって変化する。今回得られた研究知見により、ひろくさまざまな性質の髪が、表層は柔軟で内部は弾力がある二層状態にすることで、「しなやかな動きのある美しい髪」に向かうという方向性が示されたとしている。それを実現する一つの方法として、特定の有機酸を特定の条件で作用させることが有効であることも見出しているという。(編集担当:慶尾六郎)