トヨタ自動車<7203>は、2015年3月期連結決算で、純利益が初の2兆円超を記録、円安や原価改善を背景に好決算となった。また、8月4日に発表された 2016年3月期の第1四半期では、通期売上見通しを上方修正し、前期から5000億円超の売上増を見込む。この日本が誇るグローバル企業の好業績が、国内製造業を力強く牽引していくことが期待されているという。
帝国データバンクは、自社データベースである企業概要ファイル「COSMOS2」(146 万社収録)の中から、トヨタ自動車グループと直接、間接的に取引がある下請企業(一次下請先、二次下請先)を抽出し、その実態を分析した。その結果、トヨタ下請企業の6割が増収となっていることがわかった。
トヨタ自動車グループ(主要子会社16社)の一次下請企業、二次下請企業の合計は、2015年8月時点で全国に3万1072社あることが判明した。そのうち 5204社(構成比16.7%)が、グループと直接取引する一次下請。2万5868社(構成比83.3%)が、それらの二次下請となっている。
都道府県別に見ると、トヨタ本体が拠点を置く「愛知県」が6305社(構成比20.3%)で最多。一次下請では1795社(同34.5%)が同県の企業であり、トヨタ自動車グループの一次下請企業は3社に1社が同県の企業であることが判明した。
次いで、「東京都」が5575社(同17.9%)、「大阪府」が4065社(同13.1%)となった。大都市圏以外では9位の「岐阜県」、10位の「長野県」など、中部地方の県が上位にランクインしている。
売上規模別に見ると、「1億円以上10億円未満」が1万6933 社(構成比54.5%)で最多。一次下請では、「10億円以上100億円未満」の構成比が大きい(2095社、同40.3%)一方で、二次下請では「1億円以上10億円未満」(1万4608 社、同56.5%)が過半を占めている。
また、業種別に見ると、一次下請では「自動車部分品製造」が 229 社(構成比 4.4%)で最多。前回調査(2014年8月時点)と比べて増加幅が大きかったのは、「電子部品製造」(増加率 36.8%)となっている。二次下請では「産業用電気機器卸」が999社(構成比 3.9%)で最多。前回調査と比べて増加幅が大きかったのは、「自動車車体整備」(増加率 38.9%)。自動車の電子化に伴う電子部品メーカーの増加や、車体そのものに関わる製造・修理・卸業者、人員を供給する「労働者派遣業」の増加が目立ち、トヨタ自動車グループの好業績に伴い、下請企業の裾野が広がっていることが分かるとしている。
トヨタ自動車グループの下請企業のうち、2013年度と2014年度の業績が2期連続で判明している2 万6788社について業績動向を分析すると、2014年度決算が「増収」となった企業は1 万5323社あることが判明、全体の57.2%に達し「減収」企業(7003社、同26.1%)の 2倍超にのぼる。2013年度業績では、「増収」企業の構成比は 40.7%にとどまっていたが、2014年度では大きく改善した。一次下請、二次下請とも6割前後の企業が「増収」となり、それぞれ 2625社(構成比 60.7%)、1万2698社(同 56.5%)となった。
今回の調査では、2014年度は下請け企業の約6割が増収を果たし、トヨタ自動車からの波及効果が本格的に始まっていると考えることができる。しかし、今後は部品メーカーへの値下げ要請や、ユニットの共用化などを図る「TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」の本格導入に伴う取引選別などが進む可能性もあり、下請企業を取り巻く環境はいまだ流動的な面は否めない、と帝国データバンクでは分析している。(編集担当:慶尾六郎)