グローバル企業がこぞって導入を始めた「統合報告書」とは?

2015年09月05日 20:10

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日本企業のグローバル化を背景に、企業が発行する「統合報告書」への関心が高まっている

 日本企業のグローバル化を背景に、企業が発行する「統合報告書」への関心が高まっている。

 「統合報告書」とは、投資家などのステークホルダーに対し、企業の売り上げなどの財務情報だけでなく、中長期的な経営戦略、ガバナンス、パフォーマンスや環境や社会への配慮などの非財務情報を含めた企業活動全体の関連性を取りまとめたものだ。2005年に欧州で登場して以来、発行する企業が年々増え続け、今では世界で350社を超える企業が統合報告書を発行しているといわれている。また、社会的責任投資(SRI)を重視する機関投資家が増えたことにより、欧米を中心に発行の制度化が進んでいることもあり、日本企業の間でも、とくに自動車及び電機関連の企業を中心に統合報告書を発行する企業が増えているのだ。

 企業が発行する報告書といえば、企業の社会貢献を主としたCSR活動報告書や環境報告書などが思い浮かぶが、統合報告書では、ステークホルダーは企業の社会貢献活動のみならず、中長期的な戦略や将来的な展望、持続性に向けた取り組みなどをより明確に知ることができる。そのため、現在、世界的に大きな流れとなっているSRI投資やESG投資の観点からも、海外投資家の理解を深めてもらう意味で、統合報告書がもたらすメリットは大きいと考えられる。

 例えば、自動車用防振ゴム世界トップシェアの住友理工<5191>もここ数年、グローバル化を積極的に進めている企業として知られている。同社は社名変更に伴い、2014年度から統合報告書として発行を始めた。8月末には住友理工グループとして2回目となる2015年度版が発行されたが、前年より12ページ増量されており、より多くの情報が掲載されている。同社では、編集にあたり、国際統合報告評議会(IIRC)が発表している「国際統合報告フレームワーク ver.1.0」などを参考にしており、会社方針や経営体制などを代表取締役会長兼 CEO 西村義明と代表取締役社長 兼 COO 松井徹両氏によるトップメッセージをはじめ、同社の目指すビジネスモデルや各事業・製品の紹介、各種取り組みやデータを伝える「社会・環境」、さらには10年間の推移が一覧できる「財務データ」など、幅広い項目を網羅している。内容は同社ホームページで閲覧することができる。10月には英語版も発行される予定だ。

 日本郵船<9101>も2013年度より、「CSRレポート」と「アニュアルレポート」を統合し、「NYKレポート」を発行している。同レポートは同社のサイト上で一般公開されており、日本郵船グループの企業戦略と、その基盤であるCSR活動、および事業活動全般について、大変わかりやすく掲載されていると好評のようだ。

 また、2012年、13年とCSR情報と財務情報を一冊にまとめた「アニュアルレポート」を発行してきたソニー<6758>は、2014年度からはウェブサイトでの情報開示に切り替えている。同社ではその理由として、開示内容の更新を迅速に行うためと述べているが、今後、スピードが求められる国際社会の中では、年に一度の発行ではなく、こうした柔軟な対応も必要になってくるかもしれない。

 日本ではとくに2012年度以降に統合報告書を導入する企業が増えており、その流れは今後益々加速しそうだ。(編集担当:藤原伊織)