平和安全法制が自民、公明与党と次世代、元気、新党改革の賛成で19日深夜、参院で可決・成立した。
安倍晋三総理は我が国を取り巻く安全保障環境が大きく変化してきていることから、国内においては切れ目のない安全法制の整備、国外においては積極的平和主義の下、国際社会の安全のために日本として実効があがるよう、国連決議の下で活動する外国軍隊に対し、国会の事前承認の下で自衛隊を派遣し、後方支援活動を行うこと、また自衛隊が実施するPKO(国連平和維持活動)業務を拡充し、駆けつけ警護も実施できるよう今回、法整備を行ったと強調した。
一方で、今回の安保法制は、国会内はもちろん、国会外の日本全国で、集団的自衛権の行使を含む安保法案は憲法違反であり、廃案にすべきだ、あるいは今国会での成立は見送るべきとの声が国会包囲デモや反対集会の広がりで浮き彫りにもなった。このことは、世界各国のメディアが取り上げてきた。
つまり、この安保法制が、日本国内においても、国民の理解を得て支持されているといえるのかといえば、安倍総理自身が認めるように「国民の理解は広がっていない」のが現況だ。
総理は、法案成立後の記者団の質問に「世論調査の結果によれば、まだまだ理解は深まっていない。粘り強く、丁寧に説明を行っていきたい」と語った。「戦争法案とのレッテルも、結果を出していくことで、はがしていきたい」とした。
安倍総理は「国民の命と平和な暮らしを守り抜くために必要な法制で、戦争を未然に防ぐためのもの」と安全確保へ抑止力向上を図るためのものであることも強調した。
こうした、日本国内での国民世論の大きな確執、さらに、今後に予想される違憲訴訟含め、政府は国民に不安や懸念を払拭する努力を続けなければならない。
一方、外国への発信は、同じ価値を共有する韓国、経済では特に親密な関係になっている中国など近隣諸国はじめ、世界各国に、日本の今回の安保法制の狙いとPKO活動での日本の立ち位置を強く発信して頂かねばならない。
その機会は、今月下旬の国連総会にある。安倍総理は今月29日には国連総会(ニューヨーク)で演説するもようだが、「安全保障法制において、集団的自衛権の行使の一部容認を含む戦後最大の改革をなぜ、今、この時期に実施したのか、その目的とさらに、国連PKO活動の拡充や後方支援活動の拡充に踏み切ったのか、丁寧に政府の考えを発信して頂きたい。
あわせて、後方支援に関して、「弾薬の提供」は拳銃・小銃・機関銃などの他国部隊要員などの生命・身体を保護するために使用される弾薬の提供に限ること、核兵器・生物兵器・化学兵器など大量破壊兵器やクラスター弾、劣化ウラン弾の輸送は行わないことを与党と野党3党との合意事項にしており、これらを閣議決定したことを明言しておくことは、不安視している多くの国民への発信にもなり、米国などへのけん制にもなると考える。是非、国連総会を世界への発信機会として実効をあげて頂きたい。(編集担当:森高龍二)