国民の6割以上が「今国会での安保法案成立に反対」と国会で慎重審議をするよう求めてきた「集団的自衛権行使を限定容認する安保法案」が参院で採決され、自民・公明、次世代、元気、新党改革の賛成多数で可決、成立した
今回の安保法制はいかに弁明しても「強行採決」であったことは否めない。終盤国会の中継により、そのことが周知された。生活の党の山本太郎代表の指摘が反映された成果かどうかは別に、NHKが公共放送としての役割を果たしたことは評価したい。
さて、これから来夏の参院選挙まで、国政、政界は激動期に入る。安保法案に対する世代をこえ、職業を超えた、そして政権与党支援団体や地方自治体与党議員までが参加する反対運動が全国で巻き起こった事実を踏まえれば、自民、公明への批判の拡大は否めない。
一方で、維新の党は地方選挙に幹事長が足を運んだことがきっかけで、もともとの保守系議員と中道左派系議員のグループに分裂するもようだ。松野頼久代表は野党の結束で安倍政権・自公に対抗しうる受け皿づくりの必要を強く打ち出している。民主はじめ他の野党も同様だ。
今回の安保法制、労働者派遣法改正など国会審議で野党の無力感をいやというほど感じ、数の前に涙を流した。その分、国会勢力図を塗り替えなければという使命感を民主、維新、共産、社民、生活の5党議員は痛感している。
野党再編が、安保法案での共闘を踏まえて土壌としてできつつある。共産党は政策的な違いを横におき、米軍新基地建設反対の一点で他党と選挙協力を実現し、昨年の総選挙で沖縄1区から4区までの全小選挙区を野党が自民に全面勝利した。同じことを「戦争法廃止の『国民連合政府』樹立の一点で実現し、立憲主義、民主主義、平和主義を貫く新しい政治を誕生させよう」と動き始めた。野党第1党の民主党、維新の党などがどう動くのか、はらを据えなければ結果は出ないだろう。
政権交代を目指す野党に対し、安倍総理は国連総会終了後、内閣改造を行い、次なる目標(憲法改正への環境づくり)を目指すことになる。自民総裁任期は3年。目標達成には国政選挙に勝ち続けることが必須条件だ。
来夏をダブル選挙にするのか、野党の選挙態勢づくりに時間を与えないため、それ以前に『抜き打ち解散』するのか。予算国会を踏まえれば、抜き打ち解散は年内になる。解散権は総理のみが有する「宝刀」だ、総理の選挙の読み次第ということになる。与野党ともに解散を睨んだ動きがでてくるだろう。
鍵は予算国会を総理がどう乗り切ろうとするか。このまま数の力で押し切り通すのか、選挙でリセットし、勝利して、安保法案の強行採決などを国民の信任を得たとしたうえで、持ち越した労働法制の見直し、原発推進、TPP交渉促進などに弾みをつけるのか、選挙で勝てるテーマを見つければ、解散の可能性は「ゼロ」とはいえないような気がしてくるのは筆者だけか。年内の動きを注視したい。(編集担当:森高龍二)