企業の約3割が求める人材の文系・理系の相違によって違いが「ある」

2015年09月27日 19:38

 国立大学の「改革加速期間」において 2016年度から第3期中期目標・中期計画が始まることにともない、文部科学省は6月8日、全国の国立大学に対し、教員養成系や人文社会科学系の学部・大学院について、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むよう努めることを求める内容の通知を出した。成長戦略における理系強化方針や優秀な理系人材の供給を求める経済団体の要請に応えたものであったが、教育界に加えて多くの企業からも反対意見が出されるなど、今後の日本の人材育成につながる大学改革について議論が活発化している。

 そこで、帝国データバンクは、大学に求める教育分野に対する企業の見解について調査を実施した。調査期間は2015年8月18日~8月31日、調査対象は全国2万3,283 社で、有効回答企業数は1万 833社(回答率 46.5%)。

 まず、自社で業務を遂行するにあたり、大学の文系出身者と理系出身者に対して求めることに違いがあるか尋ねたところ、「ない」と考えている企業が半数となった一方、約3割は学生時代の文系・理系の相違によって求めることに違いが「ある」と回答した。「ある」と回答した企業を業界別にみると、「製造」(42.8%)、「建設」(39.0%)が高く、企業の4割前後にのぼる。「製造」では、「精密機械、医療機械・器具製造」が7割近くに達したほか、「電気機械製造」「輸送用機械・器具製造」「機械製造」も5割を超えており、とりわけ機械関連で出身分野により業務遂行において求める内容が異なっている。

 従業員数別では、概ね従業員数が多くなるほど「ある」の割合が高くなる傾向がある。とりわけ「101~300人」「301~1,000人」の企業で4割を超えており、自社の得意分野を中心に事業を展開する中堅・大手企業において文系人材と理系人材を使い分けている可能性が示唆されるという。

 企業からは「大学出身者は約2割いるが、専門的な分野とはいえ、真の適材適所にはなっていない。やはり、自社独自の指導教育が必要不可欠と痛感している」(パイプ加工製造、静岡県)や「大学別に専門性を持たせ、卒業時に高度な専門知識を持たせるようにする。それにより多種の専門知識を持った人材を採用すれば企業力はおのずと強化される」(建設、神奈川県)といった意見がみられた。

 また、 “自社の成長”“日本経済の成長”“社会の発展”のそれぞれについて、どのような分野を大学で学ぶ・教えることが重要だと思うか尋ねた。

 “自社の成長”においては、「工学系統」が45.7%で最も高く、次いで「経済・経営・商学系統」が 43.7%で続き、いずれも4割を超えている。以下、「理学系統」「農林水産系統」「法学系統」などとなった。工学系と経済系が突出しており、自社が成長するためには両分野を重要と考える企業が多いことがわかった。

 “日本経済の成長”においては、「経済・経営・商学系統」が 64.5%で最も高く、「工学系統」が63.0%で続き、いずれも6割を超える企業が重要と考えているという。さらに、「農林水産系統」「理学系統」「国際関係学系統」が5割台で続いた。

 “社会の発展”については、「医・歯・薬学系統」が63.3%で最も高く、「看護・保健学系統」「教員養成・教育学系統」「文学・語学系統」がいずれも6割台となった。“自社の成長”で1位だった「工学系統」は12位、“日本経済の成長”で1位だった「経済・経営・商学系統」は14位となっており、経済の成長と社会の発展で重要と考える分野が大きく異なる結果となった。(編集担当:慶尾六郎)