排ガス規制を逃れるために、ディーゼル車に不正なソフトウエアを搭載していた問題で大きく世間を騒がせているドイツのフォルクスワーゲン(VW)だが、8月末の国際仲裁判断により同社との資本提携関係の解消を発表し、それぞれの保有株式を売却することを公表していたスズキ<7269>は26日、保有するフォルクスワーゲンの全株式を、VW筆頭株主の持ち株会社ポルシェ・オートモービル・ホールディングへ売却するとの発表を行った。金額は非公表だが700億円程度とみられ、取得額との差約367億円を2015年9月中間連結決算にて特別利益として計上する。これにより、スズキとフォルクスワーゲンとの提携は完全に消滅することとなる。
スズキとフォルクスワーゲンは09年に資本・業務提携を結んだが、その後、経営方針などをめぐって対立が深まることとなり、今年8月末に提携解消が発表されていて。スズキは17日に、すでにフォルクスワーゲンが持つ同社の株式(発行済み株式の約19.9%)をすべて約430億円で買い戻しており、自社が持つフォルクスワーゲン株も売却する方針を示していた
ただし、フォルクスワーゲンの下部は前述のディーゼル車に不正なソフトウエアを搭載していた問題により、3割以上も下落していた。市場価格で売却したとすると、利益は数百億円少なくなることもある。そのため、問題発覚後、株価が急落し売却を急いだ可能性もあるが、スズキはあくまで株価の動向とは無関係とし、フォルクスワーゲンの意向に沿って売却先を決定したという。
売却先はポルシェ・オートモービル・ホールディングで、ドイツ時間の30日にフォルクスワーゲン株約1.5%分、439万7000株を売却する予定。スズキは売却に得た利益を15年9月中間連結決算にて特別利益として計上する。売却価格は両社の契約により開示しない。ただし、ほぼ時価相当(700億円程度)とみられており、スズキがフォルクスワーゲン株を取得した金額のほぼ倍となる。フォルクスワーゲンの株価が排ガス規制の不正問題により急落したなかでも、スズキは売却益を確保する。(編集担当:滝川幸平)