中国の新車販売が減速感を増している。業界団体の中国汽車工業協会が発表した今年8月の新車販売台数は166万4500台、前年同月比3.0%減に低迷し、5カ月連続で前年水準を割り込んだ。景気減速や国内株安による逆資産効果で、買い控えの動きが広がっているという。
同協会によると、今年通年の販売がマイナスに落ち込む可能性もあるという。まだ断言はできないとしながらも、新車販売落ち込みに警戒感を示す。仮に今年通年の新車販売が前年実績を割り込んだ場合、中国で自動車市場が急成長した1990年代以降で初めてのマイナス成長に陥ることになる。
8月の販売台数のうち、乗用車は141万8500台で前年同月比3.4%減となり3カ月連続のマイナス。SUVは前年45.6%増の45万3200台と安定して売れているが、セダンやミニバンはSUVとのトレードオフで大きな減少となっている。商用車も0.6%減の24万6000台と低迷している
日系主要メーカーの中国での8月の新車販売実績にもバラツキがある。中国経済が停滞し、現地景気が低迷するといわれるなか、日系自動車メーカーで中国販売トップの日産が苦戦している。日産の新車販売は8万9000台で、前年同月比5.5%減となり、2カ月連続で前年を下回った。
2015年になって1月、日産の中国販売は前年同月比22.2%増と大きく伸長。しかし、2月は2.4%減、3月は5.4%減と減少。4月は19.4%減と、2ケタの落ち込み。回復となった5‐6月は0.1%増と微増。そして、7月は13.9%減、8月は5.5%減と落ち込む。2月以降は、ほぼ前年実績並みか、前年割れの状態が続き回復の見通しが立たない。有力な新型車がなく、この1~2年滞っている。日産の2014年暦年の中国新車販売は、前年比0.5%増の122万1600台だった。日産は2015年、中国で前年比6.4%増の130万台以上の販売目標を掲げている。が、この目標の達成は難しそうだ。
スズキも中国で苦しんでいる。同社の発表によると、中国での8月の新車販売台数は前年同月比33%減の1万2074台。前年実績を下回るのは、これで8カ月連続となる。なかでも、6~8月は3カ月連続で前年実績を30%以上も下回り、不振が泥沼化しつつある。スズキが得意としてきた小型車で、価格の安さで攻勢を強める中国メーカーなどに押されている。同社の今年1~8月の累計販売は13万1966台で、前年同期比21.3%減だった。主力小型車の「アルト」が落ち込んでいるほか、人気だったSUV「SX4 Sクロス」も発売から1年半以上が過ぎ、新車効果が一段落した。
新型車がない三菱自動車も同様に苦戦し、8月は16.1%のマイナス、5338台だった。5カ月連続で前年割れが続く。
その一方、トヨタとホンダは前年を大きく上回った。日系自動車メーカー間で中国事業において明暗がわかれた恰好だ。トヨタやホンダは、独フォルクスワーゲン(VW)や米ゼネラルモーターズGMなどには及ばないものの、手堅く販売を拡大。8月販売はトヨタが9万4200台で前年比20%増、5カ月連続のプラス、ホンダも7万8277台、同50.7%増の6カ月連続のプラスだった。
トヨタは「カローラ」など小型車が好調で、ホンダも今年投入した新型SUVが好調。マツダの販売も堅調で、8月は1万5983台、前年比1.2%増。7カ月連続のプラスだった。(編集担当:吉田恒)