なぜ生活保護は「貧困層」をカバーできないのか

2013年01月20日 13:07

 先日公表された厚生労働省による調査の結果では、「夫婦+子2人」の生活保護世帯が、一般の低所得者の生活費を上回るという「生活保護のもらい過ぎ」が確認された 。この結果を受け、政府は2013年度から生活保護の支給額を引き下げることにしたという。

  国民の負担やデフレの影響を考えれば、ある程度の引き下げはやむを得ないのだろう。生活保護受給者の数は2000年度には107万人だったが、12年9月には213万人と倍増。12年度の生活保護費は3.7兆円に達している。

しかし、そもそも日本の生活保護制度は、生活保護基準未満の低所得世帯のうち1割程度しかカバーできていない、という事実を忘れてはならない。生活保護制度ではカバーできない貧困層が相当数、存在しているのだ。

なぜ日本の生活保護は本来、届くべきはずの人たちに届かないのか。日本には生活保護制度以外に、最低限度の生活を保障する仕組みがないのが原因だ。

具体的には、失業後の生活を保障する「失業給付」や高齢者の「最低保障年金」などの社会保障制度が不十分であるために、全てを生活保護ひとつでカバーせざるをえない。生活保護受給者のうち、約半数は無年金の高齢者だ。

生活保護以外の社会保障制度が不十分なのに、生活保護を受給するハードルは(物理的にも精神的にも)高い。そのため多くの低所得層は、誰にも頼れずにギリギリの生活を強いられることになる。

長い間、日本の社会保障の大部分は「企業」と「家族」が担ってきた。しかし失われた20年によって、「企業」から見放された低賃金の労働者や母子世帯、「家族」からの援助が期待できない高齢者などを、生活保護制度が一手に引き受けるという歪んだ構図がある。

このような現状を放置したままで、生活保護の支給額のみを引き下げても、根本的な貧困問題の解決にはならないだろう。日本の相対的貧困率は16%。7人に1人が貧困層といわれるなか、「健康で文化的な最低限度の生活」とはどういうことなのか。また増え続ける貧困層への対策が、自民党のいう「自助・自立」だけで本当によいのか、早急かつ地道な議論が必要だろう。