介護中の会社員、9割が「介護休業制度、利用せず」

2015年11月01日 12:49

 2010年に施行された「育児・介護休業法」。厚生労働省によると、企業は「2週間以上の介護を必要とする家族」をもつ労働者を対象に、時短勤務などを認めるよう定めている。パートや派遣社員でも、雇用期間など一定の条件を満たせば制度の利用は可能だ。急速に高齢化が進む中、育児だけでなく、介護と仕事の両立に悩む社員は増えている。一方で、制度の活用には多くの課題があることもわかってきた。

 富士通マーケティング(本社・東京)が、家族を介護している30歳以上の会社員200名を対象にアンケートを行った結果、介護をしている会社員の88.5%が、「介護休業制度を使用していない」と回答したのだ。

 調査は今年9月、ウェブアンケートで実施。現在介護をしている形態を聞いたところ、全体では「在宅型」が76.5%と、「施設型」を上回った。世代が上がるにつれ、「施設型」が増加する傾向にある。30代の介護者では「在宅型」が86%だったのに対し、60代では58%と、3割以上の差がついた。高齢者が高齢者の介護をする「老老介護」の場合、在宅では限界があるためだろう。

 介護休業制度を「利用した」と回答した人は、わずか11.5%だった。「利用していないが、利用する予定がある」と回答した人も8%いるが、88.5%は「現在利用していない」。 介護休業法が12年7月1日に全面施行されてから3年、取得率はまだ高くないようだ。アンケートでは19%が「会社に制度があるのかわからない」と回答しており、職場の支援制度についての認識不足も読み取れる。

 「会社に制度はあるが、利用していない」と回答した人に対し、なぜ利用していないか複数回答で聞いたところ、「今後、現在より休業が必要な状況が来るかもしれないから」が33.3%と最多を占めた。介護休暇が、時間単位など細切れではなく「まとめて取得」しかできないために、制度の利用をためらう人も多そうだ。ほかにも「仕事が忙しく休めないから」(26.7%)や「休業すると今後のキャリアに影響があると感じるから」(10%)などの理由も目立った。厚生労働省は介護休業を分割取得できるよう法改正を検討している。企業にとっても、介護休暇を取得しやすい環境づくりが急務といえるだろう。(編集担当:北条かや)