9月の鉱工業生産、3ヶ月ぶりに前月を上回る

2015年11月02日 08:49

 中国向けのスマートフォン(多機能携帯電話)の部品や化粧品などの精算が好調に推移したことが寄与して、企業の生産活動を示す9月の鉱工業生産指数が、3ヶ月ぶりに前月を上回った。民間の事前の予想では前月を下回るとされていたが、前月比1.0%アップと予想を上回る結果をみせた。

 経済産業省が10月29日に9月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)の速報値を発表。それによれば、前月比1.0%アップの97.3と3ヶ月ぶりにプラスとなった。経済産業省は今回の結果に対して、基調判断を「生産は弱含んでいる」から「生産は一進一退で推移している」に上昇修正した。スマートフォンの新機種の発売により、電子部品の生産が増加したことや、中国を中心とする訪日外国人旅行客の「爆買い」により、国内向けの化粧品の生産が好調に推移したことなどが要因として挙げられる。そのほか、住宅建築が好調なことからエアコンの生産や自動車エンジンなども伸長した。ただし、その一方で半導体製造装置や建築用機械、生産用機械などでは鈍化の傾向がみられる。

 業種別に見てみると、「爆買い」効果により化粧品などの「化学工業」が前月比5.4%アップ、中国向けの生産が回復し輸出が好調に推移したスマートフォンの部品などの「電子部品・デバイス工業」が前月比6.0%アップと全体を押し上げた。ただし半導体製造装置などの「汎用・生産用・業務用機械工業」は前月比4.8%ダウンという結果であり、中国経済の景気減速の影響が現れたものとみられる。そして先行きについては、10月を4.1%アップ、11月を0.3%ダウンと見込んでいる。

 現在、様々なところで訪日外国人旅行客がもたらす経済影響が報じられているが、こうした鉱工業生産指数にもその影響が現れている。ただし、ここのところ中国経済の先行きに対して懸念が持たれており、いつまでもこの影響が続くとは限らない。影響が続いているうちに、「爆買い」以外の何かを見つけないと、ある日、上っていた梯子が外されて失墜するとも限らない。経済産業省の基調判断の通り、現状は「一進一退で推移している」と言えるだろう。(編集担当:滝川幸平)