2020年に向け普及が加速するゼロエネルギー住宅ZEHとは?

2015年10月17日 20:52

 2014年4月に政府が閣議決定したエネルギー基本計画の中で、2020年には標準的な新築住宅をネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH=Net Zero Energy House)とすることを目標に掲げられたことにより、大手住宅メーカーを中心に、ZEHの普及が加速し始めている。

 ZEHとは、住宅の断熱性能や設備の省エネ性能の向上、再生可能エネルギーの活用等によって、年間の一次エネルギー消費量よりも、住宅で創り出したエネルギーの方が正味(ネット)で上回る、もしくはその差がゼロになる住宅のことをさす。

 経済産業省が今、本館的な普及に向け、ZEHロードマップ検討委員会を設置し、ZEHの定性的な定義をとりまとめようと動いている。9月4日公表された中間とりまとめ案では、「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」と定義した。また、同省資源エネルギー庁省エネルギー対策課では、「まずは外皮(壁や開口部など、外気を仕切る部位)の断熱性能を向上させることを優先させ、そのうえで新エネルギーを導入することでZEH化していくことが重要」としている。また、「標準的な新築住宅でZEHを実現」の定義として「ハウスメーカー、工務店等が施工する住宅の過半数がZEHとなること」とした。

 経産省が外皮の断熱性能を優先としたのは妥当だろう。そもそも、同じ発電能力のある太陽光発電システムを搭載しても、日本全国すべての住宅で同じ発電効果が得られるとは限らない。立地条件によって発電能力が大きく左右されるのは、自然エネルギーの宿命ともいえる。さらに、狭小地の住宅や集合住宅などの場合、1次エネルギー消費量を相殺する大容量の太陽光発電システムの設置は困難である。東日本大震災以降はとくに、太陽光発電がクローズアップされる事が多くなり、「ソーラーパネルが搭載されていればZEH」という安易なイメージも少なからずあるようだが、太陽光発電システムはあくまでZEHを構成する一要素なのだ。

 ちなみに経産省では、年間の一次エネルギー消費量を完全にゼロ、またはマイナスにする従来のZEHだけでなく、年間の一次エネルギー消費量を可能な限りゼロ(75%以上100%未満)に近づけた「Nearly ZEH」(仮称)も定義している。

 そんな中、住宅メーカーのZEH導入への動きも活発化してきた。先行する積水ハウス<1928>は、2013年にZEH「グリーンファースト ゼロ」を市場投入している。太陽光発電に加え、燃料電池「エネファーム」を積極導入することで発電量を補い、太陽光発電の容量とデザインのバランスにこだわっていることが特長だ。初年度の13年には戸建住宅の48%。翌14年には59%、そして直近では実に74%を達成しており、着実に販売戸数を伸ばしている。

 他にも、ZEH商品「xevoYU」を展開する大和ハウス<1925>も、20年までに住宅内で消費するエネルギーを100%自給する「エネルギー自給住宅」の商品化を目指している。また、1997年以降、PVの搭載を積極的に進め、2012年には大容量PV・定置型大容量リチウムイオン蓄電池・HEMSの3つを標準搭載した「進・スマートハイム」を発売した積水化学は、20年度までに戸建て住宅の半分をZEHにする目標を掲げている。

 住宅メーカーにとって、顧客の満足度を高める高付加価値製品であるZEHの開発と投入は必須だ。さらに同じZEH商品でも、各社によって特色の違いがある。より魅力的な商品を打ち出し、政府が掲げる2020年をめどに、いかに顧客を囲い込めるか。住宅メーカーのZEH開発競争は、益々ヒートアップしそうだ。住宅メーカー大手がZEHの普及に取り組み、業界を牽引することが、「標準的な新築住宅でZEHを実現」することの近道となるだろう。(編集担当:藤原伊織)