2015年のドル円相場は、6月2日に東京外国為替市場で2002年12月以来12年半ぶりに一時、1ドル=125円台をつけて円安が進行した。その後は一服をみせたが、8月に入って中国経済の減速懸念から金融市場が動揺した。8月24日のニューヨーク外国為替市場では、1ドル=116円台まで円が一転して急上昇するなど不安定さを強めた。10月のドル円相場は、前半は120円を割り込んで推移していたが、中国の金利引上げの発表などで一時1ドル=121円台まで円安が進んだりした。
東京商工リサーチでは10月の「円安」関連倒産の速報値を発表した。それによると、10月は13件(前年同月24件)で、7カ月連続で前年同月を下回ったが、3カ月ぶりの2桁台になった。中国経済の減速を背景に、原材料価格の下げが目立ち、石油化学製品や鉄鋼関連の取引価格が低下をみせ、円安が必ずしもコスト高に直結しない面もみられ、経営環境は変動しているとしている。
10月の倒産事例として、自動車部品・付属品の輸入販売会社のエクシブ(TSR企業コード:575235055、大阪府)は、人脈を活かし中国タイヤ協会と提携を結び、中国製品を低価格で販売していた。さらに、インターネット通販部門が好調で業績が続伸した。しかし、急激な業容拡大で借入金が膨らんでいたところに、為替相場の円安を受けて商品輸入単価が上昇し収益が悪化した。裏付けとなる資力に乏しかったことから事業継続を断念して破産を申請した。
また、インテリア用生地販売のサカタ(TSR企業コード:290067324、東京都)は、約60年の業歴を有する老舗専門商社で、人工皮革、天然皮革など各種インテリア向けの生地を取り扱い、家具メーカーなどに販路を持っていた。しかし、最近は売上減少が続いていたところに、円安に伴う仕入価格の上昇から資金繰りが悪化した。
そして、2015年1~10月の「円安」関連倒産は128件(速報値・前年同期比46.4%減、前年同期239件)にとどまった。産業別では、運輸業が前年同期比85.2%減(88→13件)と減少が目立った一方で、卸売業は同45.4%増(44→64件)と増加が目立つ。今後も輸入原材料、商品などを扱う企業の動向が注目されるとしている。(編集担当:慶尾六郎)