政府は外国人旅行客の更なる増加を目指すため、11月9日に旅行業界関係者らと観光ビジョン会議を開催した。訪日外国人の数は年々上昇しており、今年度は9月までだけでも1448万人以上に達しているが、政府は2020年までに年間2000万人以上の達成を目標として掲げている。
本会議の正式名称は「明日の日本を支える観光ビジョン会議」。議長である安倍首相を筆頭に、石井啓一国土交通相や岸田文雄外相、菅官房長官ら閣僚と旅行業界関係者で構成され、国を挙げて観光対策・外国人観光客誘致に乗り出す。
会議では今後の観光ビジョンや観光上の問題点や課題をあぶり出すことも目的となっているが、その前提として観光客の現状を把握する必要がある。それではその現状として、訪日外国人は日本への旅行でどこに行き、何を期待しているのだろうか。
日本政府観光局(JNTO)が発表している訪日旅行データハンドブック2015によれば、韓国人観光客が訪日前に期待していたことのトップは「日本食を食べること」だ。中国人観光客の期待していたことのトップは最近話題の大量ショッピング(通称「爆買い」)ではなく、こちらも「日本食」である。
先に挙げた中国・韓国は日本と若干共通する食文化を持つ国であり、日本食は受け入れられやすい傾向にあることは予想できるが、アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・ロシアなど、食文化の違いが大きいこれらの国の観光客も一番期待しているのは「日本食」であり、意外と感じる者もいれば、予想通りの結果としてとらえる旅行関係者もいるだろう。
世界的な日本食人気は飲食関係者にとっては大きなビジネスチャンスになる。しかし観光客を呼び込むには食だけではなく、「場所」も問題だ。
先の例に挙げた韓国・中国・アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・ロシアからの観光客の地域別訪問率は東京・大阪・京都・神奈川が上位にランクインしている。
逆に訪問率の低い地域は高知・鳥取・佐賀などであったが、その佐賀も今年はタイの人気ドラマや映画の撮影場所として使われたことでタイ人観光客の人気を呼んでいるという。
このように何が外国人観光客を呼び込ませるきっかけになるのかは地域の特色によって様々である。しかし佐賀県が県のフィルムコミッションを通して積極的に撮影場所の誘致活動を行ったところをみると、今後、各自治体の対策と行動力が国の観光政策や旅行業界への働きかけ以上に重要なポイントになるかもしれない。(編集担当・久保田雄城)