国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と田淵電機が共同で取り組んでいるカナダのオンタリオ州オシャワ市での初のスマートコミュニティ実証事業において、20日、太陽光パネル・蓄電池併用のインバータシステムの実証運転を開始した。
この事業は、同市内の30戸の家庭に太陽光パネルと蓄電池を1台で制御可能なハイブリッドインバータシステムを設置し、2016年度末まで、停電時における非常用電源としての活用と系統安定化を検証する。再生可能エネルギーと共存した災害に強い住宅モデルを確立し、さらに他地域への展開を狙ったビジネスモデルの構築を目指す。
カナダのオンタリオ州オシャワ市では、凍害等により年間を通じて200回を超える停電が発生しており、安定的な電力供給が大きな課題となっているという。この課題を解決するソリューションとして、NEDOは、カナダで初めてとなるスマートコミュニティ実証事業として、田淵電機、オシャワ市およびオシャワ電力(OPUC)と協力し、太陽光パネルと蓄電池を備えたハイブリッドインバータシステムを同市内の30戸の家庭に設置し、停電など非常時に各家庭の自立性を高めるとともに、電力会社による系統への遠隔出力制御を行うことでより高度な系統安定化を実現するシステムの実証事業を実施している。
2015年7月17日に、オシャワ市およびOPUCとの基本協定書(MOU)の締結以降、システムを設置して実証を行う家庭を募集してきたところ、200件を超える応募があるなど、現地において非常に関心が高いものとなっているという。今回、太陽光パネルと蓄電池を備えたハイブリッドインバータシステムを家庭に設置し、実証運転を開始した。
システムは、1つの蓄電インバータで太陽電池と蓄電池の両方を制御可能で、蓄電池から系統への逆潮流を防ぐ制御機能も備えた日本独自の技術であり、今後、2015年度内に全30戸に対してシステム設置を完了させ、2016年度末までの約1年間検証を実施する。検証内容としては、実証システムの性能評価およびビジネス性の評価を行う。
具体的には、実証システムの性能評価では、太陽電池の出力、蓄電池の充放電状態、各家庭の消費電力を測定し検証することで、オシャワ市における最適な太陽電池容量や蓄電池容量を見極める。また、停電時における非常用電源としての利用および深夜電力を蓄電池に充電し、日中に放電利用するピークシフトを考慮した、蓄電池の充放電制御等の最適なシステム運転方法の確立を図る。
一方、ビジネス性の評価では、個々に設置するシステムは各家庭の所有物としてではなく、電力会社のネットワークの一部として電力会社が一括購入し各家庭へリースすることで、各家庭および電力会社の双方にとってメリットのあるビジネスモデルの確立を図る。
これら取り組みを通じて、停電時における非常用電源としての活用および系統安定化を検証することで再生可能エネルギーと共存した災害に強い住宅モデルを確立し、さらに世界の他地域への展開を狙ったビジネスモデルの構築を目指すとしている。(編集担当:慶尾六郎)