政府が市販薬の年間購入額が一定額を超えた世帯の所得税を減らす新制度を導入する。5年間の時限措置で、医療費が膨らんで国の財政を圧迫する中、軽い症状の人は病院に行かずに市販薬で治療してもらうことで国の医療費の膨張に歯止めをかける狙いがある。
このニュースが報道されると、カワチ薬品(2664)が2013年以来の高値、マツモトキヨシHD(3088)も年初来の戻り高値に進んだほか、薬王堂(3385)、ココカラファイン(3098)などのドラッグストアも軒並み高値をつけた。中国人観光客らの「爆買い」で沸いている業界に更にポジティブな要素を与えた格好だ。
現在でも病院への受診や医薬品の購入費が年間10万円を超えると超過分を課税所得から差し引く医療費控除があり、受けるには領収書やレシートなどを添付して確定申告する必要がある。今回の減税策も家族合わせて市販薬を年間で一定額以上購入した場合、超過分を課税所得から差し引く同様の仕組みになる予定。
課税所得が減る分、それに税率をかけて計算する納税額が減る効果がある。国民健康保険加入者に義務付けられている健康診断を受診していることも条件で、控除の限度額は10万円。
「一定額」は財務省と厚労省で検討中だが1万2,000円~2万円程度となる見込み。また対象は「スイッチOTC薬」と呼ばれるものに限定される。これは薬の成分の効能や安全性の確認が進み、副作用などが少ないと認められた市販薬で「治療」の代替になり得ると判断されるもの。一部の鎮痛剤や胃腸薬、鼻炎薬や点眼薬のほか、生活習慣病やアレルギーの予防薬、禁煙補助薬などが含まれる。栄養剤などは除外される。
商品例としては、鼻炎薬「アレグラFX」、胃腸薬「ガスター10」、鎮痛剤のロキソニンS(12錠入りで約700円)などがある。
しかし商品に「スイッチOTC薬」であると明記されていないものも多く、店頭で薬を購入する消費者にはどの商品が対象になっているのか分からないという課題もある。
政府内でも、病院での受診が確実に減るしくみをつくるためさらに検討が必要だとの声があり、今後も議論を行っていく予定。16年度税制改正に盛り込む方針だが、対象商品の線引きなどもこれからで、来年度内の実施は難しいとの声があがっている。(編集担当:久保田雄城)