2012年、山中伸弥京都大学iPS細胞研究所所長がノーベル医学賞を受賞してから3年が経過したが、この間で再生医療を目玉とする医療分野は様々な動きがあった。中央社会保険医療協議会は11月18日、二つの再生医療製品の保険適用を承認した。今回承認されたのはテルモ医療機器大手テルモ<4543>の「ハートシート」とバイオベンチャー、JCRファーマ<4552>の「テムセル」だ。
再生医療の早期医療現場での活用を目指し、薬事法が「医薬品医療機器法」へ改められたのは昨年11月25日なので比較的早期に保険適用が認められたようだ。
「ハートシート」は心不全、「テムセル」は造血幹細胞移植後に起こりうる合併症、急性移植片対宿主病の治療に使用されるものだ。今回の保険適用承認により、再生医療製品について課題になっていた「高額医療費問題」に解決の糸口が見つかったのではないだろうか。
再生医療製品は高い効果が期待される一方、非常に高額な費用の負担が患者たちの不安の種であったことは確かだ。保険の適用が決定したテルモの「ハートシート」の価格は1セットで1400万円超、JCRファーマの「テムセル」は点滴薬一つで86万円をオーバーし、治療を続ければ平均して1300万円以上になる。
保険適用が承認されれば基本は3割負担になるが、ここに高額療養制度を併せればかなり負担が軽減されことになる。あまりに高額ゆえにあきらめざるを得なかった患者には、今回の保険適用は朗報だ。
さらに、今までは再生医療製品の販売・製造承認には長い時間がかかったが、薬事法の改正で早期に再生医療製品が医療現場で活用できるようになった。
他国と比べ、新しいものには慎重な姿勢を崩さなかった厚生労働省だが、再生医療の早期の現場活用を後押ししているようだ。その証拠に、昨年11月の薬事法改正(現・医薬品医療機器法)では審査期間が短縮され、臨床試験の数が少なくとも、一度製品を販売しながらその製品の有効性を確かめることができるようになっている。
高度な医療には期待がかかる分、政策決定には慎重さが求められる。しかし、病に苦しむ患者を絶望させない制度・対策も併せて必要だ。(編集担当・久保田雄城)