「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」の拡充案で「子育て世代への支援」と「消費の活発化」の双方に効果が期待される。が、親から譲り受けた資金はやがては底をつく。若者・女性の就労、労働条件・環境問題も同時に平行して検討することが必要だ。
政府は2016年度税制改正に向け、今年4月に創設された「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」の拡充案の検討を行う。
この拡充案では、結婚や子育てにかかる費用(1000万円まで)を一括して贈与する場合に贈与税を非課税とする「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」の対象に出産後の検診費、産前産後の医療・医薬品費、不妊治療の医薬品費などを加えることが提案されている。
「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」では、子や孫(20~49歳まで)の結婚や子育てに関する資金として財産を贈与する場合に1000万円までを限度に非課税となるが、ここに新たに出産後の検診費、産前産後の医療・医薬品費、不妊治療の医薬品費を追加し、同制度の利用拡大を狙うものだ。
この案は2016年度税制改正に向け、内閣府が要望事項として提出していたものだ。
内閣府提出の要望案によれば、制度利用者からの要望をもとに、結婚から子育ての一連の支援を連続的に行うことが趣旨となっている。もちろん、この趣旨の先の大きな目標は少子化の改善である。経済的負担を軽減することで結婚から出産、育児へ道を今まで以上に広げていきたい考えだ。さらに、高齢者の持つ資産を子や孫へ移すことで消費全体を活発化させたい意図もあるだろう。
今回非課税対象として検討されるのは産前産後の検診・医薬品費、不妊治療の医薬品費だが、両方とも現行の支援や援助は病院、各自治体やその時の条件・状況によってかかる負担が変化するのが共通の特徴として挙げられる。
不妊治療は高度生殖医療となると保険適用から外れるので高額な治療費を覚悟しなければならないが、それも病院設定の治療費に幅があることや、自治体の援助も同じく自治体によって違いがある。
出産後検診も基本的には保険適用はないので、これも病院や自治体によって大きな幅があり、無料の場合もあれば一回の受診で1万円以上かかることもあるという。こうした費用の幅も非課税対象になれば、経済的負担を和らげる効果が期待できる。
しかし、「子育て世代への支援」と「消費の活発化」の両方がこれで一石二鳥的に解決されるわけではない。資産を世代間でスライドさせるやり方は一時的には効果を上げるかもしれないが、将来的に長い目で見た場合、やはりその場しのぎの面が強いだろう。特に「子育て世代への支援」はそのまま「若い世代への支援」ととらえるべきであり、若者の就労・教育支援など、総合的に次世代を育成する対策が急務だ。(編集担当:久保田雄城)