来年夏の参院選挙に向けて『希望』と『飴』の大盤振る舞いが続く。その先に、何があるのか。国民一人一人が参院選挙までの半年間に安倍政権のこれまでと今後について予測することが必要だ。
政治が国民に夢や希望を与えることは暮らしに活力を与えることにつながり、評価はできる。安倍政権の掲げた3つの目標「2020年までにGDP600兆円」「出生率1.8」「介護離職ゼロ」に向かって、国民の理解、支持を得ながら政策を進めることに異論者は少ないだろう。
大胆な目標を掲げた分、『注目度』も高い。夢を提供する広報戦略は成功した。そして『飴』も経済界・財界・富裕層含め、低年金者までカバーする。この大盤振る舞いは何なのか。
自民党の山本一太参院議員(元沖縄北方担当大臣)は「来夏の参院選挙はけっして楽観出来ない。最大野党の民主党が全ての1人区に候補者を揃え、かつ共産党が公認候補を擁立しなかったとすれば、自民党は厳しい戦いを強いられるだろう。『来年7月の参院選挙が終わるまで』(もちろんその後も)、安倍政権は丁寧な国会運営を心がける必要がある。けっして傲慢になってはならない。ましてや、来年の通常国会で有権者の反対が強い法案を強引に成立されるようなことは断じてやるべきではない」(10月22日)と綴った。
翌月にも「来年の通常国会、特に7月の参院選挙前に、国民の賛否が大きく分かれるような(ましてや女性の大多数が反対しているような)法案、与党内で意見がまとまっていないような法案を強引に審議し、通すようなことは、けっしてやるべきではない!」と発信した。党内議員の隠さない本音と思われる。
経済界には法人実効税率を1年前倒しし、20%台に引き下げ。低年金者には3万円を支給する予算3624億円を補正予算案に計上した。通過すれば来年6月までに支給されることになる。
日本共産党の志位和夫委員長は「消費税大増税と年金削減を押し付けながら、1回こっきりの3万円をばらまく。ばらまく時期は来年前半、後半の2段階。これを参院選向けバラマキといわずして何というのか。税金を使った買収選挙はやめよ」と酷評する。
民主党の蓮舫代表代行も「補正予算の中身は驚くことばかり、もっとも驚いたのがこの3万円だ。何のために行うのか、全く分からない。財源なき軽減税率、高所得者にも恩恵、高齢者に3万円。投票に行ってくれる人たちには甘いアメ」と手厳しく問題視。
理由はともあれ、1100万人の低年金者にとっては3万円を支給する安倍政権に悪い気はしない。
まさに、参院選挙までは『飴』の政策が続きそうだ。そして、最大の狙いは参院での憲法改正勢力3分の2の確保にあるとみるのは筆者だけだろうか。『憲法改正』と財政健全化への『増税策』、さきの安保法制で自衛隊に課せられたPKO活動の『駆けつけ警護』任務を受けての自衛隊派遣が7月の選挙後に動き出す。
民主党の岡田克也代表が安保法案成立後、特に口にし始めた「限定無き集団的自衛権の行使を可能にする」自民が目指す憲法改正が視野に入る。7月の参院選挙は「憲法の平和主義を守り抜くのか、普通の国になるのか」の選択につながる選挙になることを忘れてはならない。
安保法案成立後の初めての国政選挙となる。争点は経済でなく、背景には国の根幹をなす「憲法改正」をテーマとした重要な選挙になることを意識しなければならない。(編集担当:森高龍二)