中小企業の海外進出の過半数が海外事業を拡大の意向 

2015年12月24日 08:32

 人口減などにより、国内市場に大きな伸びを期待するのは難しい。一方、新興国を含め世界の市場は着実に成長している。そのため成長機会を海外に求める中小企業も多い。そのような中、帝国データバンクは海外進出を行っていると目される中小企業 2,760 社に対し、海外進出への取り組みについてアンケート調査を行った。その結果、進出先国・地域は「中国」が 73.7%でトップ。次いで「タイ」が 36.0%。今後新たに進出予定のある国・地域は、「ベトナム」が最も多く 31.1%だった。

 まず、進出済みの国・地域について尋ねたところ、「中国」が最も多く73.7%(584 社)、次いで「タイ」が36.0%(285社)を占めた。いずれも日系大手製造業の進出が進んでいる国で、それに伴って同地に進出している中小企業も多いとしている。次いで、「アメリカ」、「ベトナム」「韓国」「インドネシア」、「台湾」が20%前後で並んでいる。ベトナムは中国に次ぐ進出先「チャイナ・プラスワン」の最大候補として、インドネシアはタイに続く自動車産業の集積地として、進出が進んでいる。

 また、新たな海外進出予定のある企業は135社と、海外進出企業全体の17%に止まった。その中で進出予定のある国・地域としては、「ベトナム」が最も多く、31.1%(42社)を占めた。「タイ」が19.3%(26社)、「インドネシア」が 16.3%(22社)で続く。ミャンマー、インドも各11.9%(16社)を占めており、より人件費の安い後発 ASEANや南アジアの存在感が高まっているという。

 海外に進出した理由として最も多かったのは「海外での需要増」で60.4%(480 社)、次いで多かったのは「取引先企業の海外進出」で49.8%(396社)であった。以下、「人件費の削減」、「原材料費・物流費の削減」といったコスト削減に関する理由が、それぞれ約 20%を占めた。

 そして、海外事業の今後の展開方針としては、「拡大意向」が 52.5%(417社)、「現状維持」が41.9%(333社)、「縮小・撤退意向」が5.5%(44社)となっており、拡大意向の企業が過半数となった。大手製造業の海外シフトが進んでいること、少子高齢化などにより国内市場の縮小が予想されること、地方経済の停滞により海外に活路を求める地方企業が増えていることなどが、その背景にあるとみられる。一方、中国経済の減速や新興国の政治・社会体制の不安定感から、海外事業の拡大を保留している企業もあると考えられるとしている。

 海外事業を縮小・撤退意向と回答した企業にその理由を尋ねた結果、最も多かったのは「現地人件費の上昇」で61.4%(27社)を占めた。中国の人件費が経済成長や内需拡大政策により上昇していることに加え、新たな進出先とされてきた東南アジア諸国の賃金水準も上昇傾向にある。

 次いで「海外での需要減退」、「円安の進展」が 36.4%(16社)で続く。「現地での原材料費・物流費の上昇」も25.0%を占め、総じて海外進出によるコスト削減効果が薄れてきたことを理由とする企業が多いとしている。(編集担当:慶尾六郎)