ディーゼルから電気にシフトする欧州自動車メーカー、ポルシェも進める「Mission E Project」

2015年12月30日 17:31

Mission E Project

「Mission E」は、ポルシェがEVスポーツを作ったらこうなる、ということ提示したコンセプトカーといえるだろう

 フォルクスワーゲン(VW)グループのスポーツカーメーカー、独・ポルシェ社は先日、電気自動車(EV)のスポーツカーを2020年までに発売すると正式に表明した。同社は2015年9月に開催された世界最大の自動車ショー「フランクフルトモーターショー」で4座EVコンセプトカー「Mission E」を発表しており、今後も電動化計画の「Mission E Project」を推進していく。

 ポルシェAG監査役会会長のヴォルフガング・ポルシェ氏は、「Mission Eによって我々はブランドの将来像をはっきりと示すことになります。激動する自動車の世界において、ポルシェは魅力的なスポーツカーの第一人者の地位を確保します」とコメントしている。

 「Mission E」を含めたEVモデルを生産するため、主要工場に7億ユーロ(約1000億円弱)を投資し、今後数年間で新しい塗装工場と組立工場を建設する。また、車体工場を拡大し、モーター生産のため既存エンジン工場を拡張する。これらによって1000人以上を新たに雇用するという。

 Mission Eは、4ドア4人乗りで出力が440kW(600hp)の電気駆動システムを備えている。開発している新型車では、停止状態から100km/hまで3.5秒で達する駆動システムと、航続距離500kmの実現を目指している。

ミッションEは、ふたつのモーターを搭載して合計600ps以上を発生。0-100km/h加速は3.5秒以内、0-200km/h加速は12秒以内としている。その性能はサーキットで実証済みで、ニュルブルクリンク北コースのラップタイムは8分を切るラップタイムを記録したという。

 モーターは、永久磁石同期モーター(PMSM)を2個搭載。2015年のル・マン優勝車両「919ハイブリッド」で使用していたものとほぼ同じモーターで、エネルギー回生にも使用する。また、各ホイールへ自動トルク配分する「ポルシェ・トルクベクタリング」を備えたオンデマンド型の4WDシステム、スポーティなコーナリングを可能にする4WS(4輪操舵)を採用した。

 スポーツカーとしての適切な前後重量バランスと、なるべく低重心になるように、前後車軸間のフロア下に配置したリチウムイオン電池は、現在の急速充電システムの2倍の電圧800Vシステム充電器を使用する想定で、15分で80%まで充電できるとしている。800Vを使うことで、エネルギー伝達用のケーブルを細く軽くできるなど軽量化につながるという。EVの新基準になるとしている。また無接点充電ができるオプションも用意する計画だ。

 ボディは、超高張力鋼板のほかアルミニウム、カーボンファイバー強化ポリマーなどで構成。ホイールもカーボン製で、フロントが21インチ、リアが22インチ。

 左右に4灯ずつ装備されたマトリクスLEDヘッドライトは、919ハイブリッドによく似た造形。その中央には、ドライビングアシストシステムのセンサーが組み込まれているという。前後のドアは乗り降りしやすいピラーレスの観音開き、かつてマツダRX-8が採用した4ドア構造だ。両サイドまで伸びた巨大なフロントフードの下には荷室が備わる。サイドミラーはなく、カメラが捉えた後方の映像をフロントウインドスクリーンの下端に映し出す。

 欧州の自動車メーカーは、VWのディーゼル排ガス不正問題後、急速に電気自動車開発に向けてステアリングを切り始めた。このスポーツカー専業メーカー、ポルシェが進める「Mission Eプロジェクト」のコンセプトが、今後どのように進化するか、興味は尽きない。(編集担当:吉田恒)