2013年度の障害者雇用促進法改正により、障がい者の法定雇用率が1.8%から2.0%に引き上げられた。この引き上げに伴い、18年4月1日から法定雇用率の算定に新たに精神障がい者が加わることになり、障がい者を雇用する義務がある企業の精神障がい者雇用率の上昇が見込まれている。
これを背景に、人材サービス大手テンプホールディングス<2181>傘下のフロンティアチャレンジは精神障がい者雇用の為のワンストップサービスを16年1月より開始する。雇用の創出から就労後の職場定着までを一貫してサポートするという。
精神疾患の患者数は年々増えているにも関わらず、職場や世間での理解が進まず、就労が難しくなったり、就労しても短期退職に終わっていることが多い。しかし法改正による雇用促進により、この問題を真正面から取り組むべき時期が到来している。
厚生労働省が発表した「平成27年障害者雇用状況の集計結果」によれば、15年6月1日の集計時点で、従業員数50人以上の障がい者雇用義務のある企業での精神障がい者の雇用状況は対前年比25.0%増、3万4000人超となっており、精神障がい者の雇用が拡大しているのがわかる。
同社はこのような18年度の改正法施行予定と精神障がい者の雇用拡大を受け、業務の創出と受け入れの準備、求職者と企業求人のマッチングや就労後の職場定着まで、精神障がい者の雇用・求職関連のフルサポートを行う。
例えば、身体障がい者についてはバリアフリーや補助器具の用意などで対応できるが、精神障がいについてはこうした物理的な方法でのサポートでは対処が難しい。精神障がい者の障がいの特性を見極めた上で新たに職務内容を決定するなど、異なるアプローチが必要になるが、同社はそうした点も考慮して支援していくという。
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律によれば、精神障がいの定義は5条で「統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者」とされている。
この中に現在社会問題となっているうつ病も入り、アスペルガー症候群や注意欠陥・多動性障害(ADHD)などの発達障害も状況によっては対象となり得る。
上記のような精神障がいが世間一般に認知され始めてから日はまだ浅く、ここ数年でようやく社会全体の理解の必要性が叫ばれているが、いまだ職場や学校、家族から理解を得られず、社会的・精神的に孤立する精神障がい者が後を絶たない。
こうした現状を打開するには、まず個人が所属する職場や学校などの団体が率先して精神障がいについて学び、理解して、障がい者を受け入れる体制が不可欠である。(編集担当:久保田雄城)