12月の「円安」関連倒産は6件 9カ月連続で前年同月を下回る

2016年01月07日 08:26

2015年のドル円相場は、6月に東京外国為替市場で2002年12月以来12年半ぶりに一時、1ドル=125円台をつけて円安が進行した。その後は一服をみせたが、8月に入って中国経済の減速懸念から金融市場が動揺し、ニューヨーク外国為替市場では1ドル=116円台まで円が一転して急上昇するなど不安定さを強めた。こうしたなか12月のドル円相場は、後半からは狭いレンジで推移し、概ね1ドル=120円台で推移した。

 東京商工リサーチによると、2015年12月の「円安」関連倒産は、速報値で6件(前年同月22件)にとどまり、9カ月連続で前年同月を下回った。年末にかけてガソリン価格の下落が目立ち、さらに中国経済の減速や過剰生産を背景に、鋼材関連を中心に資材価格も低下するなど、円安が必ずしもコスト高に直結しない面もみられ、経営環境は変動しているとしている。

 2015年12月の倒産事例としては、パン・洋菓子製造の諏訪製菓(TSR企業コード:420123571、長野県)がある。同社は、自社ブランド製品や天然酵母使用のパンなどを製造するほか、OEM生産も手がけていた。しかし、設備投資負担が重荷になっていたところに、円安による原材料高騰で収益が悪化し、支えきれなくなり資金がショートした。

 また、服飾雑貨輸入販売のアジ庵トーキョー(TSR企業コード:298110865、東京都)は、ベトナムや中国などから婦人服、雑貨、バッグ、アクセサリーなどを輸入し、ネット通販にも注力していた。しかし、業績が低迷するなか円安に伴う仕入価格の上昇から採算が悪化し、赤字が嵩んで破産を申請した。

 2015年(1~12月)の年間の「円安」関連倒産は149件(速報値・前年比47.1%減、前年282件)にとどまっている。ただし産業別では、運輸業が前年比86.0%減(100→14件)と減少が顕著だった一方で、卸売業が同46.0%増(50→73件)と増加が際立った。今後も輸入品や海外からの原材料などを扱う企業の動向が注目されるとしている。(編集担当:慶尾六郎)