電力小売りの全面自由化が4月スタートする。顧客確保へ電力の使用料金は数パーセント安くなるようだが、むしろ気になるのは価格競争の裏での安全管理意識やコスト削減のための安全部門の手抜きが発生しないかの方だ。
原発再稼働促進への動きが強まる中、早くも原発の安全設備関連ケーブルの系統分離ができていないケースが東京電力柏崎刈羽原発で見つかり、その後も、福島第2原発、中部電力浜岡原発、北陸電力志賀原発、東北電力東通原発、女川原発で合計6原発の13基で見つかった。
安全設備関連ケーブルは独立し敷設していなければケーブル火災時に原子炉内の状況把握や注水作業で使用するケーブルにも延焼し、重大な影響が危惧される。
原子力規制委員会は、東電に対し、今月29日までに再発防止策を報告するよう特定指導文書で指導を行った。また、北海道電力から九州電力までの8社と日本原子力発電、日本原子力研究開発機構、日本原燃の3社にも一般指導文書を出し、既存の安全系ケーブル敷設の状況について不適切敷設がないか、調査するよう今月6日付けで指示を出した。
不適切敷設が見つかった場合は是正とともに、不適切な敷設が生じた原因と再発防止対策を策定するよう指示した。調査結果は3月31日までに原子力規制委員会に報告するようにとしている。その結果は、当然、国民の前にオープンにされるべきだろう。
一方で、今回の調査対象の指示からは九州電力川内原発1、2号機や関西電力高浜原発3、4号機が外れている。なぜ外れているのか定かでない。原子力規制委員会は再稼働している原発であれ、再稼働へ準備中のものであれ、同様のケーブル敷設上の問題が発生していないか、安全対策上、調査、報告させるべきだろう。
原発再稼働には、なにより安全対策が万全であることが担保されたものでなければならない。名前だけの「世界一厳しい基準」なら、再び、原発再稼働の基準が安全神話になりかねない。
電力会社の視点や政府のエネルギー政策の視点からは完全に離れ、まさに安全対策の視点のみで原子力規制委員会はその役割を貫徹してほしい。でなければ、原発再稼働に原子力規制委員会の信頼性が構築されることはないだろう。電力会社、政府に対して常に厳しい『嫌われる存在』であって丁度いいくらいだ。その実効を期待したい。(編集担当:森高龍二)