にわかに注目を集めている「スマートテレビ構想」。アナリストによると、このスマートテレビ構想の動きは、低迷する日本のテレビ関連業界にとって起死回生の大きなチャンスになりえるという。
その理由として、日本人はとくに、他国に比べて「群れたい」意識の強い民族だということが挙げられる。ここ数年のソーシャルサイトの一大ブームをみても、日本のソーシャル好きは目を見張るものがあり、これは他国には見られない現象である。それに加え、ブロードバンド環境や緻密に張り巡らされた地デジの整備網、映像産業力のテレビ局への集中といったメディア産業構造なども、スマートテレビ発展のための地盤としては最適といえる。
スマートテレビの一般的な認識としては、「テレビ放送とインターネットの共存」だろう。でも、ひと口に共存といっても、実は大きく分けて2つの方法がある。
一つは、オーバーレイ型といわれるもので、テレビの画面にネットが混在するタイプ。
ネット動画で人気を集めている「ニコニコ動画」や「ニコニコ生放送」でお馴染みのコメントなども、一種のオーバーレイだ。アメリカ、とくにGoogleやAppleは、このタイプを採用している。
しかし、日本のスマートテレビ構想の主流はオーバーレイ型ではなく、セカンドスクリーン型と呼ばれるタイプ。これは、その名の通り、手元のスマートフォンやタブレットをセカンドスクリーンとしてテレビ番組の補足的な情報を得て楽しもうとするものだ。
日本のスマートテレビ構想を牽引する「マルチスクリーン型放送研究会」(通称マル研)は大阪の民法テレビ局が集まったテレビ局主導の研究会だ。それゆえに、テレビ放送を妨げるようなオーバーレイ型を好まない。セカンドスクリーンで、テレビ放送をアシストする形が推奨されるのも頷ける。
2013年のサービス提供開始をめざしているNHKの放送通信連携サービス「ハイブリッドキャスト」も、セカンドスクリーン型のサービスだ。近未来のテレビサービスとして期待が高まる「ハイブリッドキャスト」は、HTML5に対応することで、通信との親和性を高め、さらにデジタルテレビ以外にも、スマートフォンやタブレット端末などのセカンドスクリーンとのシームレスな連携を実現する。
例えば、サッカーのワールドカップの中継中に、選手たちの詳細なプロフィールやその日のコンディション、フォーメーションなどの情報をタブレットやスマートフォンのセカンドスクリーンでチェックしたりすることが出来る。また、セカンドスクリーンを採用することで、五ヶ国語放送の番組なども可能になるという。他にも、番組の内容やアイデア次第で様々な可能性が生まれるだろう。
ともあれ、この「ハイブリッドキャスト」が上手く成功すれば、低迷を続けるテレビ業界に元気を取り戻すためのカンフル剤となりえることは、まず間違いないだろう。(編集担当:樋口隆)