1月4日の年頭記者会見にて、安倍晋三首相が「一億総活躍元年の幕開けだ」と介護離職ゼロなどの目標実現に意欲的な姿勢を見せた。今年度の補正予算案では、介護人材の育成・確保などに444億4800万円、サービス付き高齢者向け住宅の整備に189億円を計上し、「ロケットスタートを切る」と意気込む。経済の成長によって税収を増やし、介護離職などの不安のない社会基盤を形成、それにより経済をより大きく成長させるという中長期的な「成長と分配の好循環」に挑戦する。
総務省統計局が発表した「平成24年就業構造基本調査」によると、介護をしている雇用者は239万9千人にのぼり、うち「介護休業等制度の利用あり」の者は37万8千人ほどしかいない。過去5年間に介護・看護の為に離職した者は48万7千人、このうち女性は38万9千人で約8割を占めている。夫婦間で夫のほうが収入が高いケースが多く、女性が仕事を辞めて介護を担っていると考えられる。
介護離職に至る要因は様々だが「介護休暇・介護休業制度」を利用している者が少ない上に、企業による休業制度の整備の遅れが問題視されている。中には介護で休みがちになり会社に申し訳ないと辞職するケースもあるという。政府としては「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」を2009年6月に改正、一部を除き10年6月30日から施行したが、介護休業期間は通算のべ93日まで。介護期間の平均が約10年だと言われている中、仕事と介護の両立が制度上まだまだ難しい状態である。
また、三菱UFJリサーチ&コンサルティングが介護を理由に離職した約3000人(40代・50代、離職前は正社員)を対象に「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査(12年)」を行ったところ、介護離職後に離職前と同様に正社員で再就職できた者は半数にも満たず、4人に1人が無職状態であることがわかった。
介護離職は介護をしている者の生涯賃金を下げ、自身の老後への金銭的不安へと繋がる。複雑な事情が絡み合う介護離職問題、「成長と分配の好循環」の実現で解決となるか。(編集担当:久保田雄城)