トヨタ自動車は、2016年3月期決算で営業利益2兆8000億円(前年比110%)、純利益2兆2500億円(同108%)を見込んでいる。いずれも過去最高となる。トヨタだけでなく日本の自動車メーカーは総じて好調だ。事実、日産自動車も2016年3月期純利益予想を引き上げ、5350億円とした。これも過去最高益となる。同様に富士重やマツダも過去最高益を見込んでいる。
こうした数字を積み上げられる大きな要因は、北米自動車市場における旺盛な消費力にある。米オートデータの発表によると、米国2015年暦年の自動車販売台数は、1747万0499台で前年比5.7%増となった。これまで過去最高だった2000年の約1741万台を上回り、過去最高記録を更新した。昨年12月は営業日が前年と比べて2日多く、好調な経済、長期の低金利自動車ローンやリースが提供されていること、ガソリン価格が低いままであること、消費者心理が高いことなどから、好調な販売を持続した。車型別の販売では、乗用車が前年同月比3.2%減、ライトトラックは19.0%増となった。ピックアップとSUVの人気が継続している。
2015年通年の米国内メーカー別販売前年比は、GMが105.0%、フォードが105.3%、トヨタが105.3%、ホンダが103.0%、現代が105.0%となり、この5社はシェアを落とした。一方で、FCA(フィアット&クライスラー)は107.3%、日産は107.1%、起亜は107.9%、スバルはレガシィなどが好調で113.4%となった。これらメーカーはシェアを拡大した。
高級車では、BMWブランドが前年比101.8%の34万6023台で首位、レクサスが110.7%の34万4601台で2位、メルセデス・ベンツは103.8%の34万3088台で3位だった。2015年通年のモデル名別販売では、フォード製ピックアップ「Fシリーズ」が前年比103.5%の78万0354台で34年連続最量販モデルとなった。乗用車の最量販モデルは14年連続でトヨタ・カムリとなり前年比100.2%の42万9355台だった。
米国内の消費意欲は、雇用者数の堅調な増加と賃金の伸びによって支えられ、ガソリン価格の低下も後押しして、ピックアップトラックや大型SUV、大型高級乗用車など、燃費を気にしない消費者層に売れに売れている。こうしたクルマは、1台あたりの利益も高い。加えて、日本メーカーにとって、円安の影響で日本からの輸出も増えた。
しかしながら、好調な北米市場に頼り切った経営は大きなリスクも抱えている。日本メーカーの北米依存度は、トヨタが33%、日産35%、ホンダに至っては40%といわれる。各社とも営業利益は北米に依存しているというわけだ。
米国では、昨年末にFRB(連邦準備制度)が利上げに踏み切った。これまで米好景気を支えてきた低金利消費者ローンが年明けから利上げとなる。そうなると米国内の自動車販売に影響が出るのは必至で、販売奨励金(インセンティブ)の増加などで、収益悪化が避けられないという見方が大勢だ。
北米市場に依存する自動車各社の経営はリスキーだ。その理由は明白で、北米以外での販売が不振だからだ。以前に報告したが、日本自動車販売協会連合会(自販連)が発表した2015年暦年の新車販売統計によれば、昨年日本国内の新車(乗用車・登録車)販売は270万4485台(前年比94.5%)だった。登録車のメーカーで唯一前年実績を上回ったのはマツダだけだ。軽乗用車に至っては、昨年4月から実施された軽自動車税のアップの影響で、販売台数が151万1404台(同82.2%)だった。
頼みの中国市場は昨年来の不安定な経済が影を落とす。年明け以降も株価下落は止まらず、中国経済の不安が、世界的な株価低迷とデフレ傾向が止まらない。日系メーカーの占有率が高いASEAN(東南アジア諸国連合)でも主力となるタイやインドネシアが不況から脱せない。
こうしたなかで、米国市場の景気に注目が集まっているわけだ。2016年、北米経済が失速するようなことになれば、一気に自動車メーカーの利益を圧迫する可能性があるのだ。(編集担当:吉田恒)