独フォルクスワーゲン(VW)とスズキの提携解消問題が今年、ついに決着した。2011年9月にVWとの提携解消を発表したスズキだが、その後、事態は国際仲裁裁判所での仲裁交渉に発展。4年にわたる泥仕合に終止符が打たれた。VWとスズキ・両社は、2009年12月に電撃的に“提携”を発表したが、具体的な成果を上げられないまま“破局”を迎えた。スズキ側が、VWとの資本・業務提携の解消を求めて仲裁を申し立てていた英国の国際仲裁裁判所が、スズキの主張を認める判断を下した。
スズキは、かつて米ビッグ3最大の自動車メーカー、ゼネラルモーターズ(GM)と長年にわたって提携関係を続けてきた。が、2008年のリーマンショックを機にGMの経営が悪化。その長年の提携関係が解消となった。そこでスズキは、新たなパートナーとしてVWと手を結び、VWがスズキ株の19.9%を取得、筆頭株主となった。VWとしてもスズキが得意とする小型車開発のノウハウとVWの環境技術で、次世代コンパクトカーの開発などに取り組むはずだった。
しかし、VW側が年次報告書にスズキを「持分法適用会社」と記載して、あたかも子会社のように表現した。これにスズキ側が猛反発した。スズキとしては「企業規模は大きく違うが、“出資比率20%未満”とすることで、立場は互いに対等だ」と主張してきた。ただし、ドイツの商法では出資が20%未満でも、経営に“大きな影響力行使”が認められる場合もあるという。国際提携の難しさが、今回の一見で明らかになったともいえる。
両社の亀裂が深まるなか、スズキ側は再三にわたって“別れ話”を申し入れたが、2009年当時に提携を主導したVW社の現在のヴィンターコーン社長が、首を縦に振ることはなかった。今年4月にVW車内で内紛が表面化。フェルディナント・ピエヒ監査役会長(当時)が、マルティン・ヴィンターコーン社長の任期延長に反対したことを発端に、ピエヒ会長が辞任する事態に発展してしまった。内紛の渦中にあって自らの非を認めるわけにはいかなかったヴィンターコーン社長は、「スズキに対して、損害賠償を求める権利を得ることにこだわった」と言われる。
国際裁判所が下した判断は、提携関係の解除を認定し、VWに対してスズキ株売却を命じる内容だ。
そこで、今回の仲裁判断を受けてスズキは、VWが保有するスズキ株19.9%を全て買い取る。8月31日の終値で計算すると買い取り価格は約4600億円に達する。VWがスズキ株を取得した際の価格は、約2200億円だったから、VW側は2倍以上のリターンを獲得する。VWサイドにしてみれば、このタイミングでの決着は、むしろ“渡りに船”だったといえるかもしれない。昨年以降、VWにとって最大のマーケット中国市場で販売減に歯止めがかからず、減産に追われている。今年7月時点の暦年累計新車販売台数で、世界首位の座もトヨタ自動車に奪還された。
一方のスズキもVWに対する契約違反があったとされる判決を認め「損害賠償」の支払い、株買い取り費用など、財務への影響は避けられない。
さらに、VWと進めるはずだった“次世代コンパクト”開発など、研究開発をスズキ単独で行なうことは難しい。経営上の難題は、GMとの提携解消時に戻っただけだ。鈴木修会長は、「自立して生き残ることを前提にする」と強気な構えだが、この先、スズキが巨額の研究開発費を負担しながら、単独で生き残っていくことは容易ではないはずだ。(編集担当:吉田恒)