大手・三省堂が平成21年から一昨年までに小中学校の校長らを集め「編集会議」を催し教科書採択検定途中の自社教科書を見せ、現金5万円を渡し、懇親会費や二次会飲食費まで自社持ちするなど、教科書採択への信用を大きく失墜させた問題を昨年末のコラムに取り上げた。
その際、三省堂から現金5万円を受け取った校長ら53人のうち21人は教科書採択に関わっていたことが分かっており、これら校長の言動が教科書採択に影響を与えた可能性を含め文部科学省は徹底調査し、結果を国民に公表し「教科書の不適切行為業者と教諭の処分を厳しく」と書いた。再発防止策の徹底が必要だからだ。
その一環になるのだろうが、文部科学省は小中学校用教科書発行各社に自己点検を行い報告するよう求め、その結果を22日発表した。
全22社のうち三省堂のほか、東京書籍、数研出版など10社が延べ3996人の教員らに検定中の教科書を見せ、謝礼に5万円から数千円の現金や品を渡していた。働きかける側のモラルもさることながら、金品を受け取る側のモラルのなさは、それ以上に嘆かわしい。
道徳教育が必要なのは、小中学校の児童生徒に道徳の教科書をつくり、学校現場で教える教科書発行会社や教員そのものという結果になった。何とも職業倫理の低いことか。
金品贈呈がなく、検定中の教科書を見せたというケースを含めると、教科書発行会社(22社)の半数を超え、教科書をみた教員は延べ5147人に上った。採択権限を持つ教育長や教育委員に歳暮や中元を贈る馬鹿げた会社もある。
今回の問題で金品を受け取った校長らは地元の教育委員会から懲戒処分されているのだろうか。その概要も調査し、文部科学省はすべてを公表していくべきだろう。
今月13日、兵庫県教育委員会はこの問題で謝礼金を受け取った中学校長を戒告処分にした。校長は15年度の中学教科書採択に関与していなかったが、昨年11月に、編集手当名目で受け取った謝礼5万円と懇親会費用の5千円を教科書会社に返金した。
関係教員数が明確になっている以上、教員自ら精算し、教育委員会に報告することが教育界への信頼回復の一歩だろう。また教育委員会は適切に処分し「教科書採択への信用回復」に努めるべきだ。
文部科学省は検定教科書を外部に漏らした場合、当該教科書の検定作業を停止する措置を検討する方針だが、校長らが関与した場合、戒告でなく「免職、降任、半年以上の休職処分」の重い懲戒処分をすることが再発防止につながる。常態化していたものを正すには思い切った防止策が求められる。(編集担当:森高龍二)